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東京都 千代田区 税理士 原俊之事務所

〒102-0072 東京都千代田区飯田橋一丁目7番10号 山京ビル本館305

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月~金:9:00~18:00
(祝日除く)

平成30年度税制改正のポイント

【概要】

今回の改正は、個人の所得税の課税強化が目に付きます。
とくに給与が850万円を超える方については高収入と位置づけているようです。

法人の優遇制度では、所得拡大税制の拡充がありますが、
その他の設備投資等の優遇制度には各役所の認定を必要となるものが多く創設されたのが特徴です。

相続関係では目玉として、事業承継税制としての非上場株式についての納税猶予制度が拡充しました。
一方、近年問題となっていた一般社団法人を利用した課税逃れにメスが入りました。

なお、下記のほか、大法人に関してはH32.4.1以後開始事業年度から「電子申告」が義務化されます

 


「増税のもの」

1.所得税 給与所得控除の減少
2.所得税 公的年金等控除の減少
3.所得税 青色申告特別控除の減少
4.所得税 居住用財産の買換え及び交換の長期譲渡所得の課税の特例の縮減
5.国民健康保険料の上限額増額
6.相続税・贈与税 一般社団法人等を利用した節税縮減
7.相続税 小規模宅地等の減額の縮減
8.法人税・所得税 所得拡大税制の制限
9.法人税・所得税 返品調整引当金、延払基準の廃止

 

「減税のもの」

1.所得税 基礎控除の増額
2.所得税 人的控除(配偶者控除等)の増額
3.相続税・贈与税 非上場株式の納税猶予の特例の拡充等
4.登録免許税 未登記土地の移転登記の登録免許税免税
5.相続税 小規模宅地等の減額の拡充
6.法人税・所得税 所得拡大税制の拡充
7.法人税・所得税 設備投資の税額控除新設

 

以下、詳しく述べさせていただきます。


「増税のもの」

1.所得税 給与所得控除の減少

給与所得控除とは税金計算上給与収入から引ける金額です。
お勤めの方も仕事上の経費がある程度あるだろう。ということから認められている金額(比較的金額が多い)

(1)給与所得控除額が一律10万円下がります。
(2)給与所得控除額の上限額は給与収入850万円とされ、その上限額が195万円に下がります
(今までは給与収入1,000万円で控除額の上限額は220万円、H26年以前は給与収入1,500万円で控除額の上限額は245万円)

※但し、自分が特別障害者、特別障害者の扶養親族がいる、22歳以下の扶養親族がいる、場合は給与所得控除金額について多少考慮されます。

平成32年分以後の所得税に適用

 

2.所得税 公的年金等控除の減少

公的年金等控除とは税金計算上年金収入から引ける金額です。
年金は税制上優遇されており、認められている金額(かなり金額が多い)

(1)公的年金等控除額が一律10万円下がります。
(2)給与所得控除額の上限額は年金収入1,000万円とされ、その上限額が195.5万円に(今までは控除額の上限額なし)
(3)年金所得以外の所得が多い場合の増税
①1,000万円<年金所得以外の所得≦2,000万円の場合、(1)に加え、公的年金等控除額が10万円下がります。
②2,000万円<年金所得以外の所得の場合、(1)に加え、公的年金等控除額が20万円下がります。

平成32年分以後の所得税に適用


3.所得税 青色申告特別控除の減少

青色申告特別控除額を55万円に引き下げ(従来65万円)

※但し、以下のどちらかを満たせば従来どおり65万円可能
・電子申告利用(期限内申告前提)
・元帳等について電子帳簿保存で保存

平成32年分以後の所得税に適用

したがいまして、事業的規模の個人事業の方は今後、電子申告を利用することをお勧めします。
(当事務所では利用に当たっては電子申告利用同意書にご署名と押印をいただいております。)


4.所得税 居住用財産の買換え及び交換の長期譲渡所得の課税の特例の縮減

中古の非耐火建築物に買換えする場合、以下のどちらかの要件を満たす必要があることとする(従来は以下要件なし)。

・25年以内に建築
・地震に対する安全性に係る規定(準ずる基準も含む)に適用(但し、当初満たしていなくても特例の取得期限までに満たせばok)

H30.1.1以後に譲渡して、同年4/1以後に買換資産を取得する場合に適用


5.国民健康保険料の上限額増額

保険料の年間限度額を58万円に引き上げ(現在54万円)

ここ近年頻繁の増額が行なわれてます。
今後も益々増額していくことが予想されます。


6.相続税・贈与税 一般社団法人等を利用した節税縮減

一般社団法人・財団法人は資本金という概念が無い為、
これらの法人に財産を移すと、相続税・贈与税を免れることもできていました。
上記の節税が今後、かなり封じられます。

(1)一般社団法人等に贈与等があった場合

個人から一般社団法人等(非営利型などは除く)に財産の贈与等があった場合、
※現行の要件の1つでも満たさない場合は贈与税等が課税されるようになります。

※親族等の役員比率≦1/3、役員等に特別の利益供与が無い、解散時は財産が国等に帰属、仮装経理等ないこと、など

H30.4.1以後の贈与・遺贈により取得する財産の贈与税・相続税に適用

 

(2)特定の一般社団法人等に対する相続税課税

※特定の一般社団法人等の相続開始前5年以内に理事になったことがある人が死亡した場合、
その一般社団法人等の純資産額/同族役員(被相続人も含む)をその死亡した人から、その一般社団法人等が遺贈により取得したものとして相続税が課税されます。

※特定の一般社団法人等とは以下のどれかに該当する法人
・同族役員(被相続人の3親等内の親族や被相続人が役員をしていた会社の社員等)>総役員数×1/2
・相続開始前5年以内中、同族役員>総役員数×1/2 の期間合計(H30.3.31以前の期間は含まない)≧3年


実際の財産の移転が無くても相続税が課税される。という考え方によってはおかしな改正です。
負担が大きいので、特定の一般社団法人等には該当しないように同族関係の役員の比重を減らすことをお勧めします。


H30.4.1以後の理事の死亡の相続税に適用
(但し、同日前に設立された法人はH33.4.1以後の理事の死亡の相続税に適用)

 

7.相続税 小規模宅地等の減額の縮減

H30.4.1以後の相続等に適用

(1)特定の居住用宅地等の縮減
持ち家に居住していない人(俗に言う家なき子)の特例の適用に関して、以下の人は適用できなくなります。

・相続開始時に住んでいた家屋を過去に所有していた人
・相続開始前3年以内に、その人の3親等親族や特殊関係の法人 所有の家屋に居住したことがある人

(2)貸付事業用宅地等の縮減
相続開始前3年以内(H30.4.1以後)に貸付開始した宅地等を適用対象から除外
但し、相続開始以前3年超の期間、事業的規模の貸付事業を行なっていた人が貸付を開始した宅地等はok

相続が近い見込みになってから相続税を減らす為に貸付を開始する。ということの効果が薄くなります。
(貸付すると土地の評価自体は下がりますので、あくまで小規模宅地の減額の制限が入る。ということです。)

あるいは、相続近い見込みで小規模宅地の減額の対象になりそうな土地がある場合は、
H30.3.31までに貸付を開始する。というのも1つの考えです。


8.法人税・所得税 所得拡大税制の制限

所得拡大税制とは簡単に言いますと、払う給与を増やした会社や事業主について税金を安くします。という制度です。

(1)設立事業年度
従来は設立事業年度も適用できてましたが(支給額の30%基準)、今後は設立事業年度は適用できなくなります。

(2)継続雇用者の範囲の見直し
事業年度の全期間で給与の支給がある人のみを対象とするように変更(現行は当期及び前期の両方で支給あれば全期間を問わなかった)
集計が簡便になる一方、予期しない退職者が出た場合など対象額が少なくなる可能性があります。

H30.4.1~H33.3.31までの間に開始する事業年度に適用


9.法人税・所得税 返品調整引当金、延払基準の廃止

(1)返品調整引当金の廃止

H30.4.1において対象事業を営んでいる法人のH33.4.1~H42.3.31までの間に開始する事業年度は、損金(経費)算入限度額が1年ごとに1/10づつ縮小し、最終的に廃止

ちなみに、返品調整引当金とは、契約に基づき次期以降に買い戻しを行う場合において、返品が予想される商品の利益部分について設定された引当金
適用できる業種が限られており、出版業や医薬品卸売業などです。


(2)延払基準の廃止

長期割賦販売等の延払基準の制度は廃止
但し、H30.3.31までに長期割賦販売等した法人に関しては、~H35.3.31までの間に開始する事業年度まで適用可能
また、H30.4.1以後に終了する事業年度は延払利益を10年均等で収益計上をする

ちなみに、延払基準とは、長期割賦販売等による利益の額を賦払金の支払期日の到来の都度に応じて計上する方法です。
建設業などの長期大規模工事などに適用が見られます。

今後は入金期間が2年以上にわたる長期割賦販売等に関して、納税が入金より先となり、資金繰りが厳しくなる可能性があります。

 


「減税のもの」

1.所得税 基礎控除の増額

基礎控除とは税金計算上誰でも受けられる控除金額です(現在38万円の控除額)。
基礎控除額が一律10万円あがります(48万円となります)。

但し、前年の所得が2,400万円超える人は受けられる基礎控除額は逓減していき、
2,500万円を超える人は高所得なので、基礎控除は0円となります。

平成32年分以後の所得税に適用

 

2.所得税 人的控除(配偶者控除等)の増額

配偶者控除、扶養控除、配偶者特別控除、勤労学生控除について、
おおむね所得金額要件を10万円引き上げる。

平成32年分以後の所得税に適用


3.相続税・贈与税 非上場株式の納税猶予の特例の拡充等

H30.1/1~H39.12.31の間に贈与等で取得する非上場株式に係る贈与税・相続税に適用

(1)全株式(現行2/3)の非上場株式の相続税・贈与税について、納税を猶予

代表権だった人から相続・遺贈・贈与により、現代表で原則として最大株主の後継者(同族関係者計で議決権の過半数を有する)が、
都道府県から認定を受けた一定の非上場株式を取得した場合、
全株式(現行2/3)の非上場株式の相続税・贈与税について、その後継者の死亡等の日まで納税を猶予する。

なお、代表者以外の人からの贈与等も5年間同様に対象


(2)雇用確保要件の緩和
現行は5年間、従業員数を平均で相続・贈与時の8割以上維持する必要があります。
もし、維持できなければ相続税・贈与税の納税の猶予は打ち切りとなることとなってます。

しかし、今後は緩和され、経営状態の悪化や正当な理由による場合などでもすぐに打ち切りとはならないこととなります。
この要件がこの制度の利用が進まない最大のネックだったのですが(将来のことは分からないため)、緩和により利用が増えていくものと思われます。


(3)推定相続人以外の相続時精算課税制度との併用

H29年度税制改正で、推定相続人が相続時精算課税制度との併用ができるようになりました。
相続時精算課税制度を利用することにより、納税猶予の要件を満たさないこととなったとしても、税負担をある程度軽減することができてます。

今回の改正では推定相続人以外の人も併用ができるようになります。
これにより推定相続人ではない後継者にも併用することができ、納税猶予制度が以前より利用しやすくなります。


(4)適用対象の後継者の人数増加

従来は納税猶予対象の後継者は1名という前提でしたが、計画に記載の後継者が2名又は3名いる場合はそれらの者も対象となります(但し、総議決権の10%以上所有が前提)

 

4.登録免許税 未登記土地の移転登記の登録免許税免税

昔からの土地に関して相続がされていても未登記の土地は世の中見受けられます。
それを減らしたいという主旨の改正です。

相続により土地を取得した人が移転登記をしないで死亡した場合、
相続人等がH30.4.1~H33.3.31の間にその死亡した人を登記名義人とするための登記について、登録免許税を免税

一つ前の相続等についての登録免許税を免税とするものですね。


5.相続税 小規模宅地等の減額の拡充

介護医療院に入所した被相続人の扱いです。
被相続人が介護医療院に入所したことで、居住されていない家屋の敷地について、居住用とされていたものされます。
最近、介護施設に入る老人が増えてきてますので、その場合も考慮されます。

H30.4.1以後の相続に適用


6.法人税・所得税 所得拡大税制の拡充

所得拡大税制とは簡単に言いますと、払う給与を増やした会社や事業主について税金を安くします。という制度です。

以下の要件を満たす青色申告中小企業は税額控除割合を15%(現行10%)とする。
(平均給与等支給額-比較平均給与等支給額)÷比較平均給与等支給額 ≧1.5%

なお、次の要件を満たす青色申告中小企業は、税額控除割合を25%(現行10%)とする。

・(平均給与等支給額-比較平均給与等支給額)÷比較平均給与等支給額 ≧2.5%
・次のいずれか
教育訓練費増加割合≧10% 又は 中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定受けて向上が確実に行なわれた証明がされたもの


H30.4.1~H33.3.31までの間に開始する事業年度に適用


「参考」中小企業以外は以下
次の要件を満たす青色申告法人は、税額控除割合を15%(現行10%)とする。
なお、教育訓練費増加割合≧20%の場合は、税額控除割合を20%(現行10%)とする。

・(平均給与等支給額-比較平均給与等支給額)÷比較平均給与等支給額 ≧3%
・国内設備投資額≧減価償却費×90%


7.法人税・所得税 設備投資の税額控除新設

新設された2種類の税額控除制度について簡単に記載させていただきます。

(1)高度省エネルギー増進設備等の取得等の税額控除

一定の認定を受けた青色申告中小企業者等が、(主務大臣提出の計画書記載の)高度省エネルギー増進設備等の取得等して事業に使用した場合、
取得価額の7%の税額控除(取得価額の30%の特別償却との選択)ができる制度が新設
※中小企業者等以外は取得価額の30%の特別償却のみ

適用期間:H30.4.1~H32.3.31


(2)企業主導型保育施設用資産の取得等の割増償却

事業所内保育施設の新設又は増設とともに、一定の幼児遊戯用構築物等(家具・防犯設備等含む)の取得等して事業に使用した場合、
3年間12%(建物等・構築物は15%)の割増償却ができる制度が新設

適用期間:H30.4.1~H32.3.31


【最後に】

今回は増税の項目が目に付きます。
とくに個人課税(所得税)や相続税・贈与税が目に付きます。
年間給与が850万円を超えると給与所得控除が頭打ち、ということは年収850万円超は比較的高収入と考えていると思われます。

政府の方針では給与を増やしたいと考えている一方でこういう制限が入る。というところに矛盾を感じます。
働く人のモチベーションが下がらないかな?と気になるところです。

会社より個人に資金を流すには将来の退職金を利用することがますます有利になったと思います。

 


 相続税の中で事業承継関連の納税猶予の改正は目玉です。
相続税では不動産と並び非上場株式は相続財産の中で金額比率が高く、しかも換金化が困難ということで多くの中小企業のオーナーの相続人が苦しんできてます。


 今後、納税猶予の利用が促進していくものと思われます。
(但し、税務署や都道府県への定期的な提出書類がありますので、適用する際には長期にわたって対応が必要となりますので、ご注意ください)

 所得拡大税制も拡充しており、政府の方針としてなにがなんでも給与を増やしたい。という意図が見えます。
個人的には給与増やしたいなら、年々増えている祝日を減らす(営業日を増やす)べきだとは思うのですが・・・

平成29年度税制改正のポイント

【概要】

今回の改正は、震災関連の税制がかなり創設されました。
また、震災とも関連しますが、住宅関連の工事に関する税制も強化されてます。
あとは相続関連では株価評価に影響する項目があります。

ただし、私どものお客様は東京の方が大部分なので、震災関連税制にはとくに触れません。

 

「減税のもの」

1.所得税 配偶者特別控除の見直し
2.所得税 住宅耐久性向上改修工事に関する税額控除の新設
3.所得税 省エネ改修工事に範囲の拡大
4.相続税贈与税 取引相場の無い株式の評価の見直し
5.法人税・所得税(事業所得) 試験研究費の税額控除の拡充
6.法人税・所得税(事業所得) 所得拡大税制の控除額の拡充
7.法人税・所得税(事業所得) 中小企業設備投資促進税制の拡充

 

「増税のもの」

1.所得税 配偶者控除の見直し
2.所得税 省エネ改修工事の税額控除の複数回適用の制限
3.相続税贈与税 納税義務の見直し
4.法人税・所得税(事業所得) 大法人の所得拡大税制適用要件の見直し
5.法人税・所得税(事業所得) 中小企業投資促進税制の縮小
6.消費税 仮想通貨に係る課税関係(仕入れ税額控除)の見直し

 

です。


以下、詳しく述べさせていただきます。

 

「減税のもの」

1.配偶者特別控除の見直し

※配偶者の合計所得金額123万円まで適用できるようになります(従来は配偶者の合計所得金額76万円)。
平成30年分以後の所得税で適用

※合計所得金額とは、課税標準の合計で給与は給与収入から給与所得控除を引いた後の金額です。


また、本人の合計所得金額に応じて配偶者特別控除額は以下になります。
(配偶者の合計所得が多いほど下記の枠内の控除額が逓減します)。

・~900万円 ・・・3万円~38万円
・900万円超~950万円 ・・・2万円~26万円
  ・950万円超~1,000万円 ・・・1万円~13万円
・1,000万円超 ・・・・控除なし

給与調整する配偶者を減らすようにしたいという趣旨のようです。
ただし、フルで働いている配偶者には従来通り適用が無いので、配偶者がパートの場合のみに影響ある改正です。

 

2.所得税 住宅耐久性向上改修工事に関する税額控除の新設

H29.4.1~H33.12.31の間に自分の居住の用に使用する場合に適用

(1)ローン控除(特定増改築等)・・・下記(2)との選択適用

ローン控除対象に特定の省エネ改修工事と【あわせて行なう】※一定の耐久性向上改修工事も対象に加えられます。


※一定の耐久性向上改修工事とは、①~⑧の工事で次の要件を満たすものです。

・工事費用が50万円を超えること(補助金がある場合は、補助金控除後の金額)
・増築、改築、大規模の修繕、大規模の模様替え、一室の床全部の修繕・模様替え、一室の壁全部の修繕・模様替え
・認定を受けた長期優良住宅建築等計画に基づくもの
・増改築による長期優良住宅の認定基準に新たに適合

①浴室、脱衣室 ②給排水管・給湯管 ③外壁 ④土台・軸組 ⑤床下 ⑥地盤劣化対策 ⑦基礎劣化対策 ⑧小屋裏

 

(2)税額控除・・・上記(1)との選択適用

①既存住宅の特定の改修工事の税額控除に「耐震改修工事【又は】省エネ改修工事」と【あわせて行なう】一定の耐久性向上改修工事も対象に加えられます。

税額控除額:※標準的な工事費用の額(国土交通省が決定)の10%

※(工事費用は250万円限度(太陽光発電装置設備をあわせて設置の場合は350万円限度))


②既存住宅の特定の改修工事の税額控除に「耐震改修工事【及び】省エネ改修工事」と【あわせて行なう】一定の耐久性向上改修工事も対象に加えられます。

税額控除額:※標準的な工事費用の額(国土交通省が決定)の10%

※(工事費用は500万円限度(太陽光発電装置設備をあわせて設置の場合は600万円限度))

 

3.所得税 省エネ改修工事に範囲の拡大

ローン控除や税額控除の対象となる省エネ改修工事の範囲が以下のように拡大されます。

居室の窓又は壁の断熱改修工事と【あわせて行なう】、天井・壁・床の断熱改修工事で、断熱等性能等級が一段階以上向上するもの等
(詳しい要件はここではこれ以上は触れません)

 

4.相続税贈与税 取引相場の無い株式の評価の見直し

平成29年1月1日以後の相続・贈与に適用

(1)類似業種比準価格に使用する、類似業種の上場会社の株価

現在に加えて、課税時期以前2年間平均を加える
その中で最も安い株価を使用できるようになります。


(2)類似業種比準価格に使用する、配当・利益・純資産の比重

配当・利益・純資産の斟酌割合の比重が1:1:1(従来1:3:1)に変更になります

収益力の高い会社について利益が斟酌される比重が下がるので、株価については少し安くなる可能性ができてます。


(3)会社規模の判定の大会社・中会社の適用範囲の拡大

会社規模が大きいほど、純資産価額より類似業種比準価格の斟酌割合を多く取れるため、株価が下がる可能性があります(純資産のほうが低ければ純資産価額ですべて計算も可能)


5.法人税・所得税(事業所得) 試験研究費の税額控除の拡充

(1)試験研究費の総額に係る税額控除率の増加

①税額控除率を以下に変更(上限14%(2年間のみ)、従来:8~10%)

イ.(試験研究費-比較試験研究費)÷比較試験研究費>5%
9%+(上記割合-5%)×0.3

※比較試験研究費:原則として、直前3期間の損金算入試験研究費の平均額

ロ.(試験研究費-比較試験研究費)÷比較試験研究費≦5%
9%+(5%-上記割合)×0.1

ハ.(試験研究費-比較試験研究費)÷比較試験研究費<-25%
      6%

②控除税額の上限(従来25%)
25%+(※試験研究費割合-10%)×2 ・・・35%上限

※試験研究費割合・・・試験研究費÷当期以前4年間の平均売上


(2)中小企業技術基盤強化税制に係る税額控除率の増加
(試験研究費の総額に係る税額控除制度との選択)

・税額控除率(上限17%、従来:12%)
12%+{(試験研究費-比較試験研究費)÷比較試験研究費-5%} ×0.3

・控除税額の上限
法人税額の35%(従来:法人税額の25%)


(3)試験研究費の範囲の拡大

対価を得て提供する新たな役務開発に係る試験研究のために要する以下の一定の費用が加わります。

『一定の費用』
新サービスの開発目的の一定の業務のための、原材料費、専従の情報解析専門家の人件費、経費、委託費

『一定の業務』
・主要な部分が自動化されている機器や技術を使用して行われる情報の収集
・一定の法則を発見するために、情報解析専門家により情報解析ソフトを使用して行われる分析
・発見された法則を利用した新サービスの設計
・発見された法則が妥当、法則を利用した新サービスが目的から適当であることの確認

 

6.所得拡大税制の控除額の拡充(従来:雇用者給与等支給増加額の10%)

(平均雇用者給与等支給額-比較(前期)平均雇用者給与等支給額)≧ 比較(前期)平均雇用者給与等支給額×2%
の場合、

税額控除額が以下のように上がります。
10%+(雇用者給与等支給額-※1 比較雇用者給与等支給額)÷※2 雇用者給与等支給増加額×12%(大法人は2%)

※1.比較雇用者給与等支給額とは、原則、前期の給与等の支給額
※2.雇用者給与等支給増加額とは、雇用者給与等支給額-基準(H25.3期~H26.2期)雇用者給与等支給額

 

7.法人税・所得税(事業所得) 中小企業設備投資促進税制の拡充

中小企業投資促進税制の上乗せ措置について、中小企業経営強化税制に改組して、
すべての器具備品・建物付属設備を対象とする。

即時償却または取得価額の7%(創業後5年を経過していない法人などの特定中小企業は10%)の税額控除と選択

中小企業等経営強化法の経営力向上計画の認定を受けたものがH29.4.1~H31.3.31に一定の資産を取得等したものが対象

 


「増税のもの」

1.所得税 配偶者控除の見直し

※合計所得金額1,000万円を超え方は適用できなくなります(従来は本人の所得制限なし)。
平成30年分以後の所得税で適用

※合計所得金額とは、課税標準の合計で給与は給与収入から給与所得控除を引いた後の金額です。


また、本人の合計所得金額に応じて配偶者控除額が以下のように減額されます。

・~900万円 ・・・変更なし(38万円、70歳以上配偶者は48万円)
・900万円超~950万円 ・・・26万円(70歳以上配偶者は32万円)
  ・950万円超~1,000万円 ・・・13万円(70歳以上配偶者は16万円)
・1,000万円超 ・・・・控除なし

世帯である程度税制を見るようになります。

 

2.所得税 省エネ改修工事の税額控除の複数回適用の制限

省エネ改修工事について、既存住宅に係る特定の改修工事をした場合の税額控除を
その年の前年以前3年以内に受けている場合は、適用を受けられないこととする

 

3.相続税贈与税 納税義務の見直し

平成29年4月1日以後の相続等に適用

(1)非居住者で日本国籍を有する相続人等の国外財産の納税義務

国外財産について課税対象外となる者の要件について以下のように厳しくなります。
被相続人等及び相続人等が10年以内(従来:5年以内)に日本に住所を有したことがないことに変更

(2)非居住者で日本国籍を有しない相続人等の国外財産の納税義務

被相続人等が10年以内に日本に住所を有したことがある場合は、国外財産についても課税対象となります。
(被相続人等が日本国籍が無く一時的滞在の場合は除く)

 

4.法人税・所得税(事業所得) 【大法人】の所得拡大税制適用要件の見直し(大法人のみ)

大法人の所得拡大税制を受けるための要件として、
・平均雇用者給与等支給額 > 比較(前期)平均雇用者給与等支給額
の要件が以下のように変更になります。

(平均雇用者給与等支給額-比較(前期)平均雇用者給与等支給額)≧ 比較(前期)平均雇用者給与等支給額 ×2%
である必要になりますので、ある程度の給与増額が必要です。

上記満たした場合、税額控除額が以下のように上がります。
10%+(雇用者給与等支給額-※1 比較雇用者給与等支給額)÷※2 雇用者給与等支給増加額×2%

※1.比較雇用者給与等支給額とは、原則、前期の給与等の支給額
※2.雇用者給与等支給増加額とは、雇用者給与等支給額-基準(H25.3期~H26.2期)雇用者給与等支給額


5.法人税・所得税(事業所得) 中小企業投資促進税制の縮小

中小企業投資促進税制の対象資産から器具備品を除外


6.消費税 仮想通貨に係る課税関係(仕入れ税額控除)の見直し

(1)H29.7.1以後の国内の仮想通貨の売買は消費税を非課税とする

(2)上記以前の国内の仮想通貨の購入は消費税控除可能(課税資産の譲渡等のみに要するもの)

(3)H29.6.30に税抜100万円以上の仮想通貨の保有数量>H29.6.1~6.30の各日の平均保有数量の場合、 増加した部分の課税仕入れに関しては仕入れ税額控除できないこととする

 

【最後に】

今回の改正を拝見すると通常の事業主や会社には影響がありそうな項目は少ないです。
住宅や震災関連といった個人課税と相続税の株価算定に影響が大きいくらいでしょうか

平成28年度税制改正のポイント

【概要】

今回の改正は、分かりづらいですが、法人税率減少以外はほとんどが増税項目です。
とくに大きなのは附属設備の定額法の強制、高額資産購入時の消費税の扱いです。


「減税のもの」

1.法人税 税率引き下げ
2.所得税 空き家に係る譲渡所得特例(3000万円控除)新設
3.所得税 三世帯同居改修工事に係る特例(税額控除) 新設
4.所得税 非居住者期間中の住宅ローン減税等の拡充
5.所得税 医療費控除の特例(スイッチOTC薬控除) 新設
6.所得税 通勤手当の非課税上限額の増額
7.法人事業税 法人事業税率の改正に伴う外形標準課税の軽減措置
8.消費税軽減税率


「増税のもの」

1.法人税 大法人等の繰越欠損金の控除枠の縮小
2.法人税 繰越欠損金の控除期間伸長 の適用開始先送り
3.法人税(所得税)生産性向上設備投資促進税制廃止
4.法人税(所得税)建物附属設備・構築物の減価償却方法の強制適用
5.法人事業税 外形標準課税の拡大
6.法人税(所得税)環境関連投資促進税制の縮小見直し
7.法人税(所得税)中小企業等の少額(30万円未満)減価償却資産の損金算入 適用対象法人の見直し
8.消費税 高額資産を取得した場合の消費税の中小特例(簡易・免税)の制限
9.消費税 事業者向け電気通信利用役務の提供に係る内外判定の見直し
10.加算税の見直し(増加)
11.国民健康保険料の引き上げ


です。


以下、詳しく述べさせていただきます。

 

「減税のもの」


1.法人税 税率引き下げ


平成27年4月1日以後開始事業年度は法人税率が23.9%ですが、
・平成28年4月1日以後開始事業年度23.4%
・平成30年4月1日以後開始事業年度23.2%

 と小幅な引き下げが行なわれます。


2.所得税 空き家に係る譲渡所得特例(3000万円控除)新設

H28.4.1~H31.12.31までの間に、
相続開始直前に被相続人の一定の居住用住宅及びその敷地を譲渡した場合には、
3000万円の特別控除の適用が受けられます。

S56.5.31以前に建築された家屋、譲渡対価が1億円以下その他の要件があります。
所得税特例ですが、相続関連の税制といえます。


3.所得税 三世帯同居改修工事に係る特例(税額控除) 新設

(1)住宅借入金を有する場合
※一定の三世帯同居改修工事をして、H28.4.1~H31.6.30までの間に居住した場合、
増改築等の住宅ローン減税の対象に追加

また、増改築等の住宅ローン減税と選択で以下の税額控除(控除期間5年)も選択可能

①※一定の三世帯同居改修工事に係る工事費用(250万円限度)に相当する
年末借入金残高×2%
②{年末借入金残高(1000万円限度)‐①の年末借入金残高}×1%


※一定の三世帯同居改修工事とは、工事費用50万円超(補助金ある場合は控除後)、
調理室、浴室、便所、玄関 のいずれかを増設する工事で、増設後そのうち2つ以上が複数となる工事
同居と記載がありますが、現案では三世帯の実際の同居自体は要件ではありません。

住宅借入金は償還期間5年以上が対象


(2)住宅借入金を有しない場合{有している場合も上記(1)と選択で適用可}
一定の三世帯同居改修工事して、H28.4.1~H31.6.30までの間に居住した場合、
特定改修の減税の対象に追加

また、増改築等の住宅ローン減税と選択で、以下の税額控除も選択可能

一定の三世帯同居改修工事に係る工事費用(250万円限度)×10%

  合計所得が3000万円以下であること、前年以前3年以内にこの規定を受けていないこと も要件


4.所得税 非居住者期間中の住宅ローン減税等の拡充

従来、以下の減税は居住期間のみして適用を受けられませんでしたが、
近年の海外赴任の増加等を踏まえ、日本に非居住期間でもうけらえるようになります。
平成28年4月1日以後取得等する場合に適用

・住宅ローン減税
・特定の増改築等の住宅ローン減税
・既存住宅の耐震改修の税額控除
・既存住宅の特定改修工事の税額控除
・東日本大震災関係の被災者に係る税額控除の特例


5.所得税 医療費控除の特例(スイッチOTC薬控除) 新設

現行の医療費控除との選択です。
H28.4.1~H31.12.31までの間に一定の検診・予防接種を行なう人が
自分、自分と財布が一緒の親族の※一定のスイッチOTC薬を購入した場合、
その支払った金額-12000円(88,000円限度)を所得から控除

※一定のスイッチOTC薬とは、医療用から転用された医薬品


6.所得税 通勤手当の非課税上限額の増額

実費の所得税が非課税となる通勤費は実費でも上限額が月10万円ですが、
H28.1.1以後受けるものは、これが15万円に引きあがります。


7.法人事業税 法人事業税率の改正に伴う外形標準課税の軽減措置

外形標準課税の税率がまた変わりますので、前年の改正と類似しておりますが、
法人事業税が従来より大幅に負担が増える中堅企業に配慮した軽減措置です。

(1)平成28年4月1日~平成29年3月31日までに開始する事業年度
  以下の金額が軽減されます。

・付加価値額が30億円以下の会社
   ・・・事業税課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×75%
・付加価値額が30億円超40億円未満の会社
   ・・・課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×0%~75%の間

(2)平成29年4月1日~平成30年3月31日までに開始する事業年度
  以下の金額が軽減されます。

・付加価値額が30億円以下の会社
   ・・・事業税課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×50%
・付加価値額が30億円超40億円未満の会社
   ・・・課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×0%~50%の間

(3)平成30年4月1日~平成31年3月31日までに開始する事業年度
  以下の金額が軽減されます。

・付加価値額が30億円以下の会社
   ・・・事業税課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×25%
・付加価値額が30億円超40億円未満の会社
   ・・・課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×0%~25%の間

 

ちなみに、平成27年度改正でも以下の軽減があります。
平成27年4月1日~平成28年3月31日までに開始する事業年度について、以下の金額が軽減されます。

・付加価値額が30億円以下の会社
   ・・・事業税課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×50%
・付加価値額が30億円超40億円未満の会社
   ・・・課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×0%~50%の間


8.消費税軽減税率

こちらは大きな改正ですので、後程この項目だけ別途お知らせいたします。

 


「増税のもの」

1.法人税 大法人等の繰越欠損金の控除枠の縮小
  
    法人等(資本金1億円超の会社、その他一定の会社)は現在の所得の80%を限度に欠損金の控除が可能となってますが、
  平成27年度税制改正で、以下のようになることが決定してました。

・平成27年4月1日~平成29年3月31日の間の開始事業年度・・・65%
・平成29年4月1日以後開始事業年度・・・50%

これが、さらに以下のように変わります。

・平成27年4月1日~平成28年3月31日の間の開始事業年度・・・65%
・平成28年4月1日~平成29年3月31日の間の開始事業年度・・・60%
・平成29年4月1日~平成30年3月31日の間の開始事業年度・・・55%
・平成30年4月1日~間の開始事業年度・・・50%


  毎期所得がでているわけではない大法人等には、非常に大きな影響があります。
(ただし、設立から7年を経過する日の期間内の事業年度では原則100%となります。以前の税制改正参照)
 

2.法人税 繰越欠損金の控除期間伸長 の適用開始先送り

    平成27年度税制改正では、平成29年4月1日以後開始する事業年度に生じた欠損金から
  青色申告会社の繰越欠損金(マイナスの所得)の控除できる期間が最大10年間となる予定でしたが(現行9年間)、
  この改正は、平成30年4月1日以後開始する事業年度に生じた欠損金から に変更になります。


3.法人税(所得税)生産性向上設備投資促進税制廃止

この制度が適用期限(平成29年3月31日)をもって廃止されます。
そもそも、この制度は※特定生産性向上設備等の取得等をして事業の用に供した場合に、特別償却又は税額控除を認めるものです。

  また、即時償却、税額控除率の上乗せ{7%(特定の中小企業等は10%)は平成28年3月31日の期限のまま延長なし}

※生産等設備を構成する機械及び装置、工具、器具及び備品、建物、建物附属設備、構築物並びに一定のソフトウエアで
一定金額以上で、最新モデル要件・生産性向上要件を満たすもの又は
投資利益率が15%以上(中小企業者等は5%以上)となることが見込まれるものであることにつき経済産業大臣(経済産業局)の確認を受けたもの
とされます。

通常の設備投資減税より要件が厳しく利用勝手が良くないからなのか、大企業も適用できることからか、廃止が決定されてます。
ただ、こちらはどちらかというと大企業の方が利用するかと思います(中小企業はここまでしなくても中小企業投資促進税制等あるため)


4.法人税(所得税)建物附属設備・構築物の減価償却方法の強制適用

平成28年4月1日以後取得する建物附属設備・構築物については従来定率法を選択できましたが、
今後は定額法のみとなります。

定率法の方が当初大きく減価償却費を取れる為、節税効果が大きいのです。
附属設備・構築物は比較的金額が大きい為、今年に取得等予定されている方は、
3月までに取得した方が良さそうです。


5.法人事業税 外形標準課税の拡大

資本金1億円超の会社に適用される法人事業税の※外形標準課税ですが、
以下のように付加価値割と資本割の税率が増加します。
(所得割の税率は減少)

※外形標準課税は簡単には、所得だけにかかる税金とは異なり、
それ以外に、給与等の付加価値や資本金等も基準に事業税がかかる課税制度です。
(つまり赤字でも税金が発生することが多いです。)

平成28年度に関しては、
平成27年度税制改正では、付加価値割0.96%、資本割0.4%、(所得割 所得800万円超 4.8%)
の予定でしたが、それが、
付加価値割1.2%、資本割0.5%、(所得割 所得800万円超 3.6%)
となる予定です。

ちなみに平成27年度は付加価値割0.72%、資本割0.3%、(所得割 所得800万円超 6.0%)
従来より 所得割:(資本割+付加価値割)の比率で、(資本割+付加価値割)の比重がますます増えます。


大会社について利益が出ていなくてもかかる税金が以前より多くなりますし、
利益に比較して、資本や付加価値が大きな大会社も税金が増加することが多くなると思います。

ただし、利益が多額に計上されているけれど、資本や付加価値の小さな大会社は
減税になることも考えられます。


6.法人税(所得税)環境関連投資促進税制の縮小見直し

風力発電装置について即時償却を廃止
税額控除の対象から車両を除外


7.法人税(所得税)中小企業等の少額(30万円未満)減価償却資産の損金算入 適用対象法人の見直し

青色中小法人に認められている30万円未満の固定資産について購入時一括損金算入特例ですが、
常時社員が1000人を超える法人は適用できなくなります。

社員1000人と言えばほぼ大法人というのが理由と思われます。


8.消費税 高額資産を取得した場合の消費税の中小特例(簡易・免税)の制限

高額の資産を購入して消費税の還付を受けた場合、その後しばらく簡易課税や免税を適用できず、原則課税が継続する。
となる改正です。

原則課税の期間内に、1000万円以上の高額資産(棚卸資産、固定資産)の購入等をした場合、
その課税期間開始日以後3年を経過する課税期間までは、消費税の簡易課税・免税制度は適用されません。

こちらは、平成28年4月1日以後の高額資産の仕入等に適用されます
(但し、平成27年12月31日までに締結した契約によっての平成28年4月1日以後の高額資産
の仕入等には適用されません。)


9.消費税 事業者向け電気通信利用役務の提供に係る内外判定の見直し

平成27年度税制改正により、事業者向け電気通信利用役務の提供に関しては、
役務の提供を受ける者の住所等により、内外判定がされることになりました。
したがって、国外からのサービス(電気通信利用役務)であっても日本に本社のある会社は、日本で消費税を納付することとなってます。

今回の平成28年度税制改正ではさらに、上記の利用が国外の売上等にのみ要するもの、国内の売上等のみに要するもの
によってさらに内外判定を分けることとなりました。

・国外の売上等にのみ要するもの・・・国外の仕入(消費税不課税)とする(国内事業者であっても)
・国内の売上等にのみ要するもの・・・国内の仕入(消費課税)とする(国外事業者であっても)

 なお、電気通信利用役務とは、電子書籍・音楽・広告の配信・著作物利用の許諾の取引、クラウドサービス等の電気通信サービスをいいます。

 

10.加算税の見直し(増加)

  加算税の罰金が以下のように強化されます。
加算税とは税務調査で過少申告を指摘されたり、申告期限に遅れたりした際などに発生する罰金です。

・調査の通知後修正等の指摘が発生する前までにされた修正申告の過少申告加算税
 ・・・現行0% ⇒ 5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分 10%)
・調査の通知後修正等の指摘が発生する前までにされた期限後申告または修正申告に基づく無申告加算税
 ・・・現行5% ⇒ 10%(納付税額-50万円の部分 15%)
・期限後申告や修正申告(上記を除く)等について、その申告日の前日から5年前までに
無申告加算税又は重加算税を課されたことがあるとき
 ・・・無申告加算税:現行15%、20% 重加算税:現行35%、40% についてそれぞれ10%が加算されます。

この改正は平成29年1月1日以後に法定申告期限が到来するものに適用


・調査があって修正があることを見越してから修正申告したケース、
・無申告だった申告をしたケース
・以前申告しなかった若しくは悪質な申告漏れの指摘があったケース
について課税強化がされます。

 

11.国民健康保険料の上限額引き上げ

またまた国民健康保険料の引き上げが行なわれます。
毎年行われてますが、以下のようになります。

・基礎課税額限度 現行52万円 ⇒ 54万円
・後期高齢者支援等課税限度 現行17万円 ⇒ 19万円

なお、国民健康保険税は「医療保険分(基礎課税分)」「後期高齢者支援金分」「介護保険金分」の3つからなっております。

 


【最後に】

今回の改正を拝見すると減税項目はほとんど見当たらず、小幅な所得税の改正程度です。
増税項目が多いのは、消費税の軽減税率導入による税収不足を補うため、ある意味しょうがないのかもしれません。
ただ、軽減税率も実際どこまでやれるのかも疑問があり、マイナンバーの導入遅延と伴い不明瞭なことが多々あります。

平成27年度税制改正のポイント

概要】

今回の改正は、全体的には減税路線です。
ただし、減税がはっきりしているのは中小法人の法人課税と贈与などです。
大法人(資本金1億円超)などは逆に増税になるケースも考えられます。

  今回、ここ近年で一番多くの改正があったように思われます。

 

「減税のもの」

1.法人税 税率引き下げ
2.法人税 繰越欠損金の控除期間伸長
3.法人税 所得拡大税制の適用要件の緩和
4.法人事業税 外形標準課税の付加価値割における所得拡大税制の導入
5.法人事業税 外形標準課税の軽減措置の導入
6.法人税(所得税) 特定の資産の買い換えの場合の課税の繰延べ制度の延長と見直し
7.法人税(所得税) 地方拠点強化税制の創設

8.所得税等 ふるさと納税の控除枠の拡大
9.所得税等 住宅取得等減税の延長

10.贈与税 直系尊属から住宅資金の贈与を受けた場合の非課税の延長等
11.贈与税 住宅資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の延長等
12.贈与税 結婚・子育て資金の贈与を受けた場合の非課税
13.贈与税 教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税の拡充・延長

 

「増税のもの」

1.法人税 大法人等の繰越欠損金の控除枠の縮小
2.法人税 試験研究費の税額控除枠の1年間繰越の廃止
3.法人事業税 外形標準課税の拡大

4.消費税 国際間の電気通信サービスの内外判定の見直し

5.所得税等 非居住者親族の扶養控除等の適用にあたっての親族関係書類の提出等の義務化

6.その他 国民健康保険税等の課税限度額の上限引き上げ


です。

以下、詳しく述べさせていただきます。

 

「減税のもの」


1.法人税 税率引き下げ

平成27年4月1日以後開始事業年度は、法人税率が23.9%(現行25.5%)に1.6%下がります。
なお、中小企業の所得800万円までの法人税率15%はそのままで、これを2年延長となります(15%は時限措置で本法では19%)

これにより、東京都の法人実効税率は35.64%に減少することとなります(中小企業では所得800万円超部分)

 

2.法人税 繰越欠損金の控除期間伸長

現在の、青色申告会社の繰越欠損金(マイナスの所得)の控除できる期間は最大9年間となってますが、
これが10年間に変更されます。

平成29年4月1日以後開始する事業年度に生じた欠損金から適用されます。
(まだ当分先のことです)


3.法人税 所得拡大税制の適用要件の緩和

「給与等支給額を【5%】以上増加させる」という部分が以下のように緩和されます。
事業年度別に以下のように緩和されます。

・平成28年4月1日以後開始事業年度 3%
・(平成28年4月1日~平成29年3月31日までの間の開始事業年度の大法人等は4%)

従来は、中小法人は平成28年4月1日以後開始事業年度から5%に戻る予定でしたが、
その前の平成28年3月31日までの間の開始事業年度 と同様に3%となります。


なお、この所得拡大税制の適用要件は今回の改正で
大法人等(資本金1億円以上その他)の事業税の外形標準課税にもかかわるため、
念の為、以下所得拡大税制について記載させていただきます。


所得拡大税制とは、国内雇用者(役員やその役員の親族などを除く)の給与等支給額を3%(中小法人)以上増加させるなどの一定の場合に、
その増加給与額の10%の税額控除を認める。という制度です(「雇用促進税制」と選択)。
但し、法人税額の20%(大企業は10%)が税額控除の上限

要件としては以下の全てを満たす必要があります。

(1)経費に算入される給与等支給額(以下「給与等支給額」)
≧ 基準年度(平成25年3月末以前で、最も新しい日から開始する事業年度)の雇用者給与等支給額 × 103(中小法人)%

(2)給与等支給額 ≧ 前期の給与等支給額
(3)※平均給与等支給額 >(現行≧)前期の平均給与等支給額

※平均給与等支給額とは、給与等支給額÷月別給与等支給者合計数


   なお、こちらの制度は出向先法人が出向元法人へ出向者に係る給与負担金の額を支出するケースでは、
・出向元においては給与負担金を控除
・出向先においては給与負担金を加算(当該出向先法人の賃金台帳に当該出向者を記載しているとき)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.htm#Q19


したがって、影響のありそうな会社様は、決算時に初めて準備すると間に合わなくなる可能性もある為、
最低限、基準年度(平成25年3月末以前で、最も新しい日から開始する事業年度)の雇用者給与等支給額 
の集計をしておくことをお勧めします。

 

4.法人事業税 外形標準課税の付加価値割における所得拡大税制の導入

以下は増税項目のところで触れますが、
資本金1億円超の会社に適用される法人事業税の※外形標準課税ですが、
今回の改正で付加価値割と資本割の税率が増加します(最終的には税率は2倍に増加)。
(所得割の税率は最終的には税率は2/3に減少)

※外形標準課税は簡単には、中小企業の所得だけにかかる税金とは異なり、
それ以外に、給与等の付加価値や資本金等も基準に事業税がかかる課税制度です。

上記に伴い増税される大会社への配慮の為に制度が設けられました。


所得拡大税制の要件を満たす場合は、以下の雇用者給与等支給増加額を法人事業税の付加価値割の金額から控除できます。

経費に算入される給与等支給額(役員やその役員の親族などを除く) - 基準年度(平成25年3月末以前で、最も新しい日から開始する事業年度)の給与等支給額(役員やその役員の親族などを除く)


ちなみに、資本割部分についての考慮はありません。

平成27年4月1日から平成30年3月31日までに間に開始する事業年度に適用

 

5.法人事業税 外形標準課税の軽減措置の導入

上記4.にも記載したとおり、外形標準課税の税率が大幅に変わりますが、
法人事業税が従来より大幅に負担が増える中堅企業に配慮した軽減措置です。
平成27年4月1日~平成28年3月31日までに開始する事業年度について、以下の金額が軽減されます。

・付加価値額が30億円以下の会社・・・事業税課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×50%
・付加価値額が30億円超40億円未満の会社・・・課税標準額 ×(その期の事業税率-前年度の事業税率)×0%~50%の間(具体的な率は今後の政省令で明らかになると思われます。)


6.法人税(所得税) 特定の資産の買い換えの場合の課税の繰延べ制度の延長と見直し

適用期限を迎えた、もっとも使い勝手の良い、買換え制度の適用期限が2年3ヶ月延長されます。
一定の10年超所有の土地・建物・構築物を譲渡して、一定のの土地・建物・構築物を取得した場合の譲渡利益の課税の繰延制度です。

なお、この改正に伴い、以下の見直しも行われてます。

・対象となる買換え資産から機械装置及びコンテナ用の貨車を除外
・地域再生法改正後の大都市等以外から大都市等への買い替えは、繰延割合が従来の80%から75%(同法の特定地域への買換えは70%)に減少

 

7.法人税(所得税) 地方拠点強化税制の創設

東京でお仕事をされている方には基本的に影響はありませんので、詳細はここでは割愛しますが、
地方にある本社機能等の強化や東京23区から地方への移転をした場合に、
設備投資減税や雇用促進税制の上乗せが受けられることとなります。

地方再生法改正法の施行日以後に適用

 

8.所得税等 ふるさと納税の控除枠の拡大

従来、ふるさと納税を実施すると、最小限の負担である2千円(寄付金控除の控除できない金額)で、
地域の物産等を取得することができましたが、その場合の住民税の控除の限度額は個人住民税所得割の10%でした。

つまり、寄附金額から2,000円を引いた金額が、「個人住民税所得割額」の10%を超えるケースでは、
実質負担が2,000円以上となっておりました。

この控除限度額が今後は倍になって、個人住民税所得割の20%となります。

したがって、今後は2,000円の負担としつつ、ふるさと納税を利用して、地域の特産品を従来の倍を取得することができます。
(つまり実質2,000円で数万円相当のものを購入するのと同意義です)
但し、今後、特産品は従来より経済的に換算すると抑えられる可能性があります。

こちらの改正は、平成28年分以後の個人住民税から適用されます。


なお、この改正に伴い、確定申告が必要ない方がふるさと納税した場合は、
従来は寄付金控除を受ける為には、確定申告が必要だったのですが、
今後(平成27年4月1日以後)は、寄付先の地方自治体が代わって手続きを行なう形となり、
ふるさと納税の寄付金控除を受ける為だけの確定申告は不要となります。
(但し、6団体以上への寄付の場合は、確定申告が必要です。)


9.所得税等 住宅取得等減税の延長

住宅の取得に関連した、以下の減税措置の期限が平成31年6月30日まで延長されます。

・住宅ローン減税
・住宅増改築等ローン減税

(以下は住宅ローンが無くても適用可能なもの)
・既存住宅について耐震改修をした場合の減税
・既存住宅について特定の改修工事をした場合の減税
・認定住宅の新築等の減税

 

10.贈与税 直系尊属から住宅資金の贈与を受けた場合の非課税の延長等

適用期限が平成31年6月30日まで延長されます。

また、平成26年は上限が500万円(省エネルギー性・耐震性を備えた住宅は1000万円)でしたが、

・平成27年は上限1000万円(※省エネルギー性・耐震性を備えた住宅は1500万円)
・平成28年~29年9月は上限700万円(省エネルギー性・耐震性を備えた住宅は1200万円)
・平成29年10月~30年9月は上限500万円(省エネルギー性・耐震性を備えた住宅は1000万円)
・平成30年10月~31年6月は上限300万円(省エネルギー性・耐震性を備えた住宅は800万円)

となります。

但し、その際の取得家屋に消費税率10%が適用されている場合は以下のようになります。
・平成28年10月~29年9月は上限2500万円(省エネルギー性・耐震性を備えた住宅は3000万円)
・平成29年10月~30年9月は上限1000万円(省エネルギー性・耐震性を備えた住宅は1500万円)
・平成30年10月~31年6月は上限700万円(省エネルギー性・耐震性を備えた住宅は1200万円)


※省エネルギー性・・・省エネルギー対策等級4以上
耐震性・・・耐震等級2以上
また、以下も対象に加わります。
一次エネルギー消費量等級4以上、高齢者等配慮対策東急3以上

 

11.贈与税 住宅資金の贈与を受けた場合の相続時精算課税の延長等

適用期限が平成31年6月30日まで延長されます。

なお、適用対象となる増改築に以下の工事も加わります。
・一定の省エネ改修工事
・バリアフリー改修工事
・給排水管工事や雨の侵入を防止する部分の工事

 

12.贈与税 結婚・子育て資金の贈与を受けた場合の非課税

20歳~49歳の人を対象に、直系尊属が結婚・子育て資金として信託等をした場合、
1人あたり1000万円(結婚資金は300万円)までを非課税とする制度が創設されました。

平成27年4月1日~平成31年3月31日までに信託等に拠出したものが非課税対象となります。

・結婚資金・・・婚礼(披露宴を含む)、住居費、結婚引っ越し費用 のうち一定のもの
・子育て資金・・・妊娠費用、出産費用、子の医療費や保育料 のうち一定のもの


ただし、信託等をして、50歳の時点で使い残しがある場合、
その残額について贈与税が課されるため、その点注意が必要です。

 

13.贈与税 教育資金の一括贈与を受けた場合の非課税の拡充・延長

教育資金の一括贈与の非課税措置が平成31年3月31日まで延長されます。

また、教育資金の使途に以下も加わります。
・通学定期代
・留学渡航費用


ちなみに、この制度は以下の通りです。
直系尊属(両親、祖父母)から30歳未満の直系卑属(子・孫・ひ孫)に対して、
受取人1人あたり1500万円(学校等以外に支払われる金銭は500万円)までを教育資金の為の信託等にすることを条件に、
贈与税を非課税とする制度です。

なお、教育資金として使用するのが前提ですので、30歳に達した時点で信託等から使用していない残がある場合、
その残金については、その時に贈与があったものとして、贈与税が発生します。

こちらは、教育コストが相対的に上がっている現状では、家庭に嬉しい制度ですし、
教育業界の活発化も期待できます。
但し、教育資金として使用しなかった残金額について贈与税が課されてしまう点には注意が必要です。


ただ、自分の子供に対しては必要な都度の資金支出は基本的に従来通り非課税ですので、
この制度はどちらかというと、祖父母が孫の教育資金を出す場合に適用するものと思います。

 


「増税のもの」

1.法人税 大法人等の繰越欠損金の控除枠の縮小

大法人等(資本金1億円超の会社、その他一定の会社)は現在、所得の80%を限度に欠損金の控除が可能となってますが、
今後は以下のようになります。

・平成27年4月1日~平成29年3月31日の間の開始事業年度・・・65%
・平成29年4月1日以後開始事業年度・・・50%

毎期所得がでているわけではない大法人等には、非常に大きな影響があります。

ただし、設立から7年を経過する日の期間内の事業年度では原則100%となります。
つまり大法人等でも設立からあまり経過していない会社は従来より控除枠が増え、減税になります。

 

2.法人税 試験研究費の税額控除枠の1年間繰越の廃止

現在、試験研究を行うと税額控除を受けられる場合があるのですが、
そもそも発生している法人税が少なく、控除枠全てを使いきれなかった場合、その控除枠の1年間の繰り越しができていたのですが、
今後はその1年間の繰り越しができなくなります。

 

3.法人事業税 外形標準課税の拡大

資本金1億円超の会社に適用される法人事業税の※外形標準課税ですが、
以下のように付加価値割と資本割の税率が増加します。
(所得割の税率は減少)

※外形標準課税は簡単には、所得だけにかかる税金とは異なり、
それ以外に、給与等の付加価値や資本金等も基準に事業税がかかる課税制度です。


・現在 付加価値割0.48% 資本割0.2% (所得割 割所得800万円超 7.2%)
・平成27年度 付加価値割0.72% 資本割0.3% (所得割 所得800万円超 6.0%)
・平成28年度 付加価値割0.96% 資本割0.4% (所得割 所得800万円超 4.8%)


従来は 所得割:(資本割+付加価値割)の比率は 3/4:1/4 でしたが、
今後は 5/8:3/8(平成27年度)、1/2:1/2(平成28年度) となり、比重が大幅に変わります。

大会社について利益が出ていなくてもかかる税金が以前より多くなりますし、
利益に比較して、資本や付加価値が大きな大会社も税金が増加することが多くなると思います。
したがって、増税項目に記載してます。

ただし、利益が多額に計上されているけれど、資本や付加価値の小さな大会社は
減税になることも考えられます。

 

4.消費税 国際間の電気通信サービス等の内外判定の見直し

電子書籍・音楽・広告の配信・著作物利用の許諾の取引、クラウドサービス等の電気通信サービスについては、
サービス提供の事務所等の所在地からサービスを受けるものの住所地で、
消費税の内外判定を行うことと変更になります。
つまり、国外事業者から国内事業者へのインターネット等取引について、国内事業者の消費税の課税対象となります。

これを、「リバースチャージ方式」といいます。

それに伴い、海外から上記の取引を利用する事業者は消費税が基本的に増大します。
ただし、※課税売上割合95%以上の事業者は申告対象から除外が可能ですので、消費税額に影響はありません。

※課税売上割合=課税売上÷(非課税売上+課税売上)
居住用不動産賃貸業、有価証券取引、社会保険診療報酬、土地譲渡 などが非課税売上です。


ちなみに、【消費者向け】の同様の電気通信サービスは、その国外事業者が消費税の納税義務者となりますので、
【消費者向け】は、上記の【事業者向け】と反対の位置づけです。


上記の改正は平成27年10月1日以後の取引に適用


なお、上記同様の改正(「リバースチャージ方式」)は、平成28年4月1日以後に国外事業者が国内での芸能・スポーツ等のサービス提供にも適用されます。

 

5.所得税等 非居住者親族の扶養控除等の適用にあたっての親族関係書類の提出等の義務化

こちらは、外国居住の親族がいない方には影響ないですが、近年外国の方も増えている状況ですので記載しました。
従来、外国居住の親族などについて、扶養控除などの控除を受ける場合、税法上は扶養している。という根拠資料の提出等が不要だったのですが、
今後は必要となります(親族関係書類と送金関係書類を提出または提示が必要です。)

増税の項目に入れたのは、従来多少アバウトだったことが厳密化することにより、
結果として実質的に増税となると思われるからです。

なお、上記の親族関係書類と送金関係書類 が外国語の場合は翻訳文を添付が必要です。

こちらの改正は平成28年分以後の所得税に適用されます。


6.その他 国民健康保険税等の課税限度額の上限引き上げ

こちらは頻繁に増税が行われています。
現在、国民健康保険税は「医療保険分」「後期高齢者支援金分」「介護保険金分」の3つからなっております。
これらの上限額がそれぞれ以下のように変更(増税)となります。

基礎課税分 51万円⇒52万円
後期高齢者支援金等課税分 16万円⇒17万円
介護納付金課税分 14万円⇒16万円


一昔前の人々に比較すると負担が大幅に増加し、今後も増えていくと思われます。

 

【その他】
その他の細かい改正としては、
・未成年者のNISAに類似している制度の導入(年間80万円まで)・・・平成28年以後
・NISAの限度額の増加(年間100万円から120万円に変更)・・・平成28年以後

 


【最後に】

大まかには減税路線ですが、お勤めの方の減税項目は基本的にほとんどありません。
贈与についてはいろいろとありますが、それはあくまで稼ぎとは関係なく親族間の財産移動なので、
個人の手取りに変更はなく、年配者が貯蓄しているものを世に放出するように誘導しているとも見ることができます。

一方、法人については様々な諸規定ができましたが、
利益が常に発生している大法人は税率低下により減税となる一方(但し法人事業税が増加の見込み)、
中小法人は所得800万円までの税率がかわらず、少々軽減措置が拡充等した程度なので、

資本金1億円以下の法人で利益が800万円超の会社は減税となる一方、
そうでない会社には減税効果があまりないような気がします。


はっきりしているのは今回の改正は贈与税部分の軽減が特徴です。

【概要】

 

 今回の改正は、前倒しの投資減税を除けば、とちらかと言えば増税路線のように思われます。
また、前倒しの減税とあわせて考慮すると、投資を行なう企業は優遇するけれど、勤務している個人からは多く徴収する方向性です。

 


「減税のもの」

●法人税  復興特別法人税の1年前倒し廃止
●所得税等 小規模企業共済の小規模企業者(加入対象)の範囲の拡大
●法人税  (主として大企業の)交際費損金不算入制度の見直し


「増税のもの」

●所得税等 給与所得控除の上限引き下げ
●所得税等 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の譲渡対価要件の引下
●所得税等 土地譲渡所得の相続税取得費加算特例の減少
●所得税等 ゴルフ会員権等の損益通算制限
●その他  国民健康保険税等の課税限度額の上限引き上げ
●消費税  簡易課税のみなし仕入率の見直し

 

「12/4に成立した先行の減税のもの」

●法人税等 給与支給額拡大時の税額控除(所得拡大促進税制)の拡充
●法人税等 中小企業投資促進税制の拡充・延長
●法人税等 生産性向上設備投資促進税制の創設
●法人税等 研究開発税制の拡充・延長
●法人税等 既存建築物の耐震改修投資促進税制の創設


です。

 以下、詳しく述べさせていただきます。

 

「減税のもの」

 

1.法人税  復興特別法人税の1年前倒し廃止

 

  現在、復興の財源の為、法人税の10%相当の復興特別法人税が課されておりますが、
1年前倒しで廃止されます。

 ちなみに、復興特別法人税は、平成24年4月1日から平成27年3月31日までの期間内の
最初に開始する事業年度開始の日から原則として3事業年度となります。
 これが2事業年度となりますので、3月決算法人は平成26年3月期までで、2月決算法人は27年2月期までとなります。


2.所得税等 小規模企業共済の小規模企業者(加入対象)の範囲の拡大

 

 経営者等(会社役員及び個人事業主等)が加入できる、退職金制度としての小規模企業共済に関して、 
商業・サービス業等については、従来その会社等の従業員が原則5人以下の経営者で無いと加入できませんでした。

 宿泊業・娯楽業に関しては、その要件が緩和され、今後は20人以下となる予定です。 

 小規模企業共済は、掛金月額は1,000円~70,000円までの500円きざみで自由に設定できます
支払時は全額所得控除で、受取りは退職所得課税又は年金形式選択の場合は雑所得課税となり、税制上お得な制度です。

経営者で加入されていない方は是非加入されることをお勧めします

 


3.法人税 (主として大企業の)交際費損金不算入制度の見直し

 

 従来は資本金1億円以上の大企業に関しては少額交際費(1人当り5,000円以下の社外飲食交際費)を除き、
全額税務上経費(以下「損金」という)となりませんでしたが、今後は一定の交際費は一部損金になります。

 外部飲食費の50%を損金算入が認められます(社内飲食費は認められない)。

 

 なお、この制度は中小法人も現状の制度と選択で請けることができますが、
中小法人は年間800万円まで現状、全額損金算入可能ですので(平成25年4月1日以後開始事業年度)、
交際費が年間1,600万円以上ある中小法人でないと50%損金算入を選択するメリットがありません。

 但し、そこまで交際費を使用する中小法人はほとんど目にすることはありませんので、
この改正はまさに大企業向けの交際費の改正となります。

 

 

「増税のもの」

1.所得税等 給与所得控除の上限引き下げ

 
  給与に関しての増税項目が平成24年度改正に引き続きさらに強化される予定です。

  前回の改正では、平成25年から給与が年間1,500万円を超える人は※給与所得控除が一律245万円で頭打ちとなりましたが、
 今回の改正では、さらに以下のように制限が加わります。

 

 ・平成28年以後 給与収入1,200万円を超える方・・・給与所得控除230万円で頭打ち
 ・平成29年以後 給与収入1,000万円を超える方・・・給与所得控除220万円で頭打ち


  したがいまして、オーナー社長等は将来の退職金などとあわせて、給与設定を見直すことをお勧めします

 ※給与所得控除とは簡単には、税金計算上経費とみなして給与収入から引ける金額です。

 

 

2.所得税等 特定の居住用財産の買換え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例の譲渡対価要件の引下

 

  不動産の買換え特例、交換特例の改正となります。
  不動産を譲渡した場合は、通常分離課税として、【譲渡収入−取得費(取得費が不明の場合は、譲渡収入の5%)−譲渡費用】
 に関して税金を課されることとなります。

 

  但し特例として、不動産の譲渡にあわせて、一定の不動産を購入(買換え)した場合や、一定の他の不動産と交換した場合には、課税を繰り延べることができます。

  その特例ですが、要件の1つに【譲渡資産の譲渡対価が1.5億円以下】がありますが、この譲渡対価要件が1億円に引き下げられる予定です。
 あまり大きな不動産に関しては適用ができなくなります。

  この改正は、平成26年1月1日以後に行なう居住用財産の譲渡について適用します。

 


3.所得税等 土地譲渡所得の相続税取得費加算特例の減少

 

  相続財産を相続開始日の翌日から3年10ヶ月以内に譲渡した場合、譲渡所得の特例があります。
 譲渡所得の計算は、【譲渡収入−取得費(取得費が不明の場合は、譲渡収入の5%)−譲渡費用】となっておりますが、
 この取得費に相続税相当の一部を加算することができます。

 

  以前は土地(土地の上に関する借地権等も含む)に関しては、譲渡した土地だけでなく、
 相続した全ての土地に関しての相続税相当に関して譲渡所得の計算上、考慮することができてましたが、
 今後は、譲渡した土地に関しての相続税相当に関してのみ考慮することができるようになります。

  確かに以前の方が理論的では無かったので、あるべき形に変更した。という改正だと思います。

  この改正は、平成27年1月1日以後に開始する相続により取得した資産を譲渡する場合に適用されます。

 

4.所得税等 ゴルフ会員権等の損益通算制限
 
    いよいよ改正が入った規定です。
  従来ゴルフ会員券等の譲渡損失は、給与等と合算して、税金を取り戻すことができていたのですが、
 今後はできなくなります。

  バブル期の高値で購入した会員権の大部分は1/10以上の下落が見られますが、
 従来は、そういった損をしている会員権を譲渡した場合、その損失を税金上考慮することができていました。

  平成26年4月1日以後の行なう譲渡から制限されますので、
 売却を検討されている方は、3月31日までに譲渡することをお勧めします。

  なお、気に入っているところの会員権であれば、名義書き換え料と節税額の比較ですが、
 ゴルフ会員権のクロス取引(売却して、同一銘柄を再度購入する)を行なう考えもあります。
  但し、名義書き換え料は比較的高いのでご注意ください。
 (なお、クロス取引を行なう場合、きちんと名義書き換えを行って下さい。そうしないと損失について否認される可能性が高いです。)。

 


5.その他  国民健康保険税等の課税限度額の上限引き上げ

 

 現在、国民健康保険税は「医療保険分」「後期高齢者支援金分」「介護保険金分」の3つからなっております。
このうち、「後期高齢者支援金分」「介護保険金分」の上限額がそれぞれ以下のように変更となります。

 後期高齢者支援金等課税額 14万円⇒16万円
 介護納付金課税額 12万円⇒14万円


 保険関係や年金関係はますます負担が大きくなっております。

 


6.消費税  簡易課税のみなし仕入率の見直し

 

 消費税の簡易課税の適用を受けている事業者は今後少々不利になる可能性があります。
不利になる業種としては、「不動産業」「金融業」「保険業」の3業種です。

 みなし仕入率の変更
 ・不動産業  50%→40%
 ・金融業及び保険業 60%→50%

 

 みなし仕入れ率とは、簡易課税を選択している事業者について消費税の計算上、
払った消費税とみなして、売上等に対する消費税から控除できる率です。
 したがって、経費のほとんどが給与等の事業者は簡易課税を選択したほうが有利な場合が多いです。

 この改正は、平成27年4月1日以後開始課税期間に適用されます。

 

 

【12/4に成立した先行の減税のもの】

 

1.法人税等 給与支給額拡大時の税額控除(所得拡大促進税制)の拡充

 

 現在、適用要件のネックになっている、「給与等支給額を【5%】以上増加させる」という部分が大幅に緩和されます。
事業年度別に以下のように緩和されます。

 

 原則平成26年4月1日以後終了の事業年度より適用(事業年度変更した会社などはそれ以前でも可能な経過措置あり)

・H27.3.31以前に開始する事業年度 2%以上
・H27.4.1からH28.3.31までの間に開始する事業年度 3%以上
・H28.4.1以降 変わらず(5%以上)


 他にも以下の要件が改正されます。
以前は要件の1つとして、平均給与等支給額 ≧ 前期の平均給与等支給額 について、
対象が「継続雇用者に対する給与等」になり、≧が>になります。


 「継続雇用者に対する給与等」とは、具体的には、
その事業年度とその前事業年度の両方で支給を受けた雇用保険の一般被保険者に対する給与等(高年齢継続雇用者を除く)
 を言います。


 ところで、所得拡大促進税制とは以下になります。

 国内雇用者(役員やその役員の親族などを除く)の給与等支給額を●%(現行5%)以上増加させるなどの一定の場合に、
その増加給与額の10%の税額控除を認める。という制度ができる予定です(「雇用促進税制」と選択)。
 但し、法人税額の20%(大企業は10%)が税額控除の上限

 

 要件としては以下の全てを満たす必要があります。

(1)経費に算入される給与等支給額(以下「給与等支給額」)
   ≧ 基準年度(平成25年3月末以前で、最も新しい日から開始する事業年度)の雇用者給与等支給額 × (100+●)%

(2)給与等支給額 ≧ 前期の給与等支給額
(3)※平均給与等支給額 >(現行≧)前期の平均給与等支給額

  ※平均給与等支給額とは、給与等支給額÷月別給与等支給者合計数


   なお、こちらの制度は出向先法人が出向元法人へ出向者に係る給与負担金の額を支出するケースでは、
・出向元においては給与負担金を控除
・出向先においては給与負担金を加算(当該出向先法人の賃金台帳に当該出向者を記載しているとき)
http://www.meti.go.jp/policy/economy/jinzai/syotokukakudaisokushin/syotokukakudai.htm#Q19

 


2.法人税等 中小企業投資促進税制の拡充・延長

 

 中小企業等が※一定の設備投資を行なった場合に受けられる中小企業投資促進税制の改正があります。。
産業競争力強化法の施行日(H26.1/20)~H29.3.31までの間に取得等したものに適用

※一定の設備投資は、中小企業投資促進税制に該当する者のうち、さらに、以下3.の生産性向上設備投資促進税制の要件に該当するものとなります。


(1)税額控除(税額控除とは単純に税金を減らせる制度です。なお、特別償却との選択です。)
 なお、その事業年度の法人税額の20%が上限
                  現行     ※改正後
 資本金3,000万円以下     取得価額の7%  取得価額の10%
 資本金3,000万円超1億円以下    −     取得価額の7%

 ※以下3.の生産性向上設備投資促進税制の要件に該当するもの


(2)特別償却(特別償却とは通常の減価償却に加えて前倒しで減価償却できる制度です。なお、税額控除との選択です。)
                  現行     ※改正後
 資本金1億円以下       取得価額の30%   即時償却

 ※以下3.の生産性向上設備投資促進税制の要件に該当するもの


  ※税額控除と特別償却では、通常、税金を減らせる税額控除の方が有利です(特別償却はあくまで減価償却の前取りであるため)。

(3)参考
  そもそもの中小企業投資促進税制の対象設備は【新品】で以下のとおりです。
 ちなみに、改正後については、以下3.の生産性向上設備投資促進税制の要件にも該当が必要です。

①機械・装置  160万円以上/1台

②器具・備品

イ.電子計算機 120万円以上/複数台合計(30万円未満の少額特例資産は除く)
ロ.(インターネットに接続された)デジタル複合機 120万円以上/1台
ハ.試験機器又は測定機器 120万円以上/複数台合計(但し、30万円以上/1台のみ考慮される)

 ③ソフトウェア 一定の自社利用のもので70万円以上/複数合計(30万円未満の少額特例資産は除く)

④車両     車輌総重量3.5トン以上の貨物運送用普通自動車

⑤工具     測定工具及び検査工具 120万円以上/複数台合計(30万円未満の少額特例資産は除く) 

 


3.法人税等 生産性向上設備投資促進税制の創設

 

  一定の設備投資を行なった場合に税額控除又は即時償却を受けられる制度が創設されます。

(1)税額控除(税額控除とは単純に税金を減らせる制度です。なお、特別償却との選択です。)  なお、その事業年度の法人税額の20%が上限

・産業競争力強化法の施行日(H26.1/20)~H28.3.31までの間に取得等・・・取得価額の5%(建物・構築物は3%)  
・H28.4.1~H29.3.31・・・取得価額の4%(建物・構築物は2%)  


(2)特別償却(特別償却とは通常の減価償却に加えて前倒しで減価償却できる制度です。なお、税額控除との選択です。)

・産業競争力強化法の施行日(H26.1/20)~H28.3.31までの間に取得等・・・即時償却  
・H28.4.1~H29.3.31・・・取得価額の50%(建物・構築物は25%) 


(3)対象設備
次の設備のうち、以下の①又は②に該当するもの

イ.建物付属設備        電気設備のうちその他のもの、冷暖房設備、昇降機設備、ブラインド のうち 120万円以上/複数台計(60万円未満のものを除く)


ロ.建物            断熱材、断熱窓 のうち 120万円以上/1台


ハ.ソフトウェア(中小企業のみ) 設備の稼働状況等に係る情報収集機能及び分析・指示機能を有するもの のうち 70万円以上/複数台計(30万円未満のものを除く)


ニ.器具備品          冷蔵機付陳列棚、冷暖房設備、電気・ガス機器、試験測定機器、サーバー用PC(中小企業のみ) のうち 120万円以上/複数台計(30万円未満のものを除く)


ホ.機械装置          160万円以上/1台


ヘ.工具(ロール)       120万円以上/複数台計(30万円未満のものを除く) 


ト.構築物(改善設備のみ))  120万円以上/1台


①先端設備
    ・最新モデル、かつ、
   ・旧モデル比で生産性(生産量、精度、エネルギー効率など)が年平均1%以上向上するもの(ソフトウェアはこの前提は無くても適用可能)

 

②改善設備
    こちら現段階では何が該当するのか分かりづらくなっておりますが、大綱では以下のように記載されております。
   生産性の向上の要件を満たすることにつき経済産業局の確認を受けた投資計画に記載された、構築物・建物付属設備・建物・ソフトウェア・器具備品・機械装置・工具で
   投資利益率が5%(大企業は15%)以上のものをいいます。

 

4.法人税等 研究開発税制の拡充・延長

 

 試験研究費を増加させた場合の税額控除制度について、以前は税額控除額が増加試験研究費×5%だったのが、増加試験研究費×増加割合(30%限度)と改正されます。
 なお、その他、適用要件の変更等もありますが、増加試験研究費の税額控除は大規模な製造業等でないとあまり見られないので、詳細は割愛いたします。

 

5.法人税等 既存建築物の耐震改修投資促進税制の創設

 

 耐震診断が義務付けられている既存耐震不適格建築物について、平成27年3月31日までに耐震診断の結果報告を行ったものが、
平成26年4月1日~耐震診断の結果報告日以後5年までの間に取得又は建設した耐震改修対象建築物の部分について、
取得価額の25%の特別償却(特別償却とは通常の減価償却に加えて前倒しで減価償却できる制度です。)をできることとなる予定です。

 

 なお、耐震基準に適合するものとして、建築士や指定確認検査機関、地方公共団体の証明がされたものが対象となります。

 建築物に対して耐震工事を考えている事業者にとってメリットがあります。

 

 

【最後に】

 今回の改正は会社や事業主の減税重視で、その分勤務している個人から税を徴収しようという流れのように思われます。
とはいえ、先行して公表された投資減税等はなかなか使い勝手の良いものもあります。

 

 大企業で交際費が多少考慮されるようになったのは近年まれに無い改正部分です。


 ご不明な点等ありましたらお気軽にご連絡いただければ幸いです。

平成25年度税制改正のポイント

【概要】

 今回の改正は、おおむね減税項目の方が多いように思われます。
特に雇用する人を増やすケースや給与を増やすケースで税制上の優遇を受けられるのは大きいです。

 

 その他目玉としては、教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税が大きなものです。
増税項目で大きなものは、相続税の基礎控除の見直しですが、こちらはあくまで相続税だけの話なので、
創業期や成長期の会社関係には影響はほとんど無いと思います。

 

 適用時期の記載の無いものは、原則平成25年4月1日以後開始事業年度から適用されます。


 今回の改正で大きなものを
・減税のもの
・増税のもの
 に分けて記載すると

 

「減税のもの」

●法人税等 交際費等の損金不算入額の見直し
●法人税等 給与支給額拡大時の税額控除(所得拡大促進税制)の創設
●法人税等 雇用者数が増加した場合の税額控除(雇用促進税制)の拡充
●法人税等 研究開発税制の拡充
●法人税等 生産等設備投資促進税制の創設
●法人税等 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の創設
●印紙税  印紙税の非課税金額の拡充

●所得税 住宅ローン減税の拡充
●所得税 金融所得一体化の拡充
●相続税 小規模宅地等の減額特例の拡充
●相続税 未成年者控除・障害者控除の金額引き上げ
●贈与税 相続時精算課税制度の適用要件の拡充
●贈与税 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税


「増税のもの」

●所得税  最高税率の見直し
●所得税等 社会保険診療報酬の特例の適用対象者の縮減
●所得税等 上場株式等の配当・譲渡所得の10%軽減税率の廃止
●相続税  基礎控除の見直し


です。

 以下、詳しく述べさせていただきます。


【減税のもの】

1.法人税等 交際費等の損金不算入額の見直し

 現在、資本金1億円以下の中小企業では、交際費の上限枠が年間600万円まであるのですが、
これが年間800万円まで拡大しました。

 また、上記の枠の中でも現状では、交際費のうち10%は税務上の経費枠から外されるのですが、
その制限もなくなる予定です。


 交際費が少なくなっている現状で、交際費を増加させて景気促進したいという意図と思われます。
交際費が比較的多い会社は減税になります。

 なお、大企業の取り扱いに変更はありません。

 


2.法人税等 給与等支給額拡大時の税額控除(所得拡大促進税制)の創設

 国内雇用者(役員やその役員の親族などを除く)の給与等支給額を5%以上増加させるなどの一定の場合に、その増加給与額の10%の税額控除を認める。という制度ができました。
 但し、法人税額の20%(大企業は10%)が上限

 給与の増額により消費拡大を政府が意図しているものと思われます。

 

要件としては以下の全てを満たす必要があります。

(1)経費に算入される給与等支給額(以下「給与等支給額」)
   ≧ 基準年度(平成25年3月末以前で、最も新しい日から開始する事業年度)の給与等支給額 × 105%

(2)給与等支給額 ≧ 前期の給与等支給額
(3)平均給与等支給額 ≧ 前期の平均給与等支給額

 ※以下の「雇用促進税制」と選択

 


3.法人税等 雇用者数が増加した場合の税額控除(雇用促進税制)の拡充

 雇用者数を増加させ、一定の要件に該当する場合に
増加した雇用者数1人あたり20万円の税額控除を受けることができる制度がありますが、
これが、1人あたり40万円に控除額が増加します。
 但し、法人税額の20%(大企業は10%)が上限

 ※前の「所得拡大促進税制」と選択

 


4.法人税等 研究開発税制の拡充

 一定の試験研究を行った場合、税額控除制度が手当されております。
その上限額が法人税額の30%(従来は法人税額の20%)に引き上げられます。

 試験研究費の税額控除には複数の仕組みがありますが、
中小企業の代表的なものとしては、中小企業技術基盤強化税制と呼ばれる、
一定の試験研究費の原則12%の税額控除制度などがあります。

 

 ちなみに、対象となる試験研究費は以下のようなものとなります。
「製品の製造又は技術の改良、考案若しくは発明に係る試験研究のために要する経費」

 


5.法人税等 生産等設備投資促進税制の創設

 以下の要件を満たす、国内設備投資を増加させた法人については、
その取得価額の3%の税額控除(又は30%の※特別償却)を認める制度ができました。
但し、税額控除の上限額は法人税額の20%

 ※特別償却とは、簡単に言いますと減価償却の前倒しです。

 中小法人だけでなく大法人でも適用できるのが特徴です。

・生産等設備への年間総投資額>減価償却費
・生産等設備への年間総投資額>前期の生産設備等への年間総投資額×110%

 ※生産等設備とは、製造業その他の事業用の減価償却資産(無形固定資産は除く)
で構成されているものです。

 

 国内設備投資を増やしたいという観点から設けられた制度です。

平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に開始する各事業年度に適用されます
(設立事業年度は適用不可)

 


6.法人税等 商業・サービス業・農林水産業活性化税制の創設

 商業・サービス業などの資本金3,000万円以下の中小企業等が
経営革新支援機関(弊事務所も該当します)等のアドバイスに基づいて以下を取得した場合、
取得価格の7%の税額控除又は30%の特別償却が認められることとなりました。
 但し、税額控除の上限額は法人税額の20%とし、控除限度を超える金額は1年間の繰り越しが可能です。

・1台60万円以上の建物付属設備
・1台30万円以上の器具備品

なお、例として、シャンプー台設備、照明設備、冷蔵オープンショーケース、看板、陳列棚、レジスターなどがあげられます。

 

 平成25年4月1日から平成27年3月31日までの間に取得等する場合に適用されます

他の税制優遇制度より金額要件が比較的少なくなっておりますので、該当する会社・個人事業主は比較的多いと思われます。
 その場合、ぜひ経営革新支援機関(弊事務所も該当します)にご相談いただけたらと思います。

 


7.印紙税  印紙税が不要となる上限金額の増加

 現在、売上代金の領収書を発行した場合、3万円未満について印紙が不要で、
3万円以上ですと印紙を貼りつける必要があります。

 これが、平成26年4月1日以後作成するものは5万円未満について印紙が不要となります。
飲食店など、頻繁に領収書を発行する事業主は大幅なメリットとなります。

 


8.所得税 住宅ローン減税の拡充

  皆様ご存知の住宅ローン減税について、現在の適用期限は平成25年12月31日ですが、その期限が4年延長されることとなりました。

 また、平成26年4月から平成29年12月までに居住の場合は、
対象となる借入金の限度額が4千万円(現在2千万円)となる予定です。
 但し、住宅の消費税の税率が8%又は10%の場合のみがその限度額増加の対象です。

 

 こちらは、消費税の税率増加後の住宅購入の冷え込みを防ぐため、
消費税率増加後についてローン減税を拡充して対応する流れとなってます。

 


9.所得税 金融所得一体化の拡充

  現在、上場株式等の売却損は上場株式等の配当と損益通算の選択をすることができますが、
この損益通算対象に国債などの※特定公社債等とよばれるものの利子所得や配当所得も加わることとなりました。

 ※特定公社債等とは、国債、地方債、上場公社債、公募公社債などが該当します。

平成28年1月1日以後から適用されます。

 


10.相続税 小規模宅地等の減額特例の拡充

 特定居住用宅地等の適用対象面積を330㎡までに拡充されます。(現在、240㎡)

 特定居住用宅地等とは要件がありますが、簡単にいいますと
亡くなった方の家の土地部分については上記の面積の上限まで80%の評価減を認めましょう。
 という制度です。
 単なる投資不動産と異なり、相続人の住む家について相続税を考慮しますというものです。

 

 今回の改正でさらに特定事業用宅地等と呼ばれるものと上記を併用して特例適用する場合、
従来はできなかった、それぞれについて上限まで特例を併用できる見込みの流れとなっておりますが、
詳細はここでは割愛します。

 平成27年1月1日以後の相続について適用

 


11.相続税 未成年者控除・障害者控除の金額引き上げ

 未成年者控除とは、未成年者の相続人に一定の控除を認めるもので、
現在、「(20歳−年数)×6万円」ですが、これが「(20歳−年数)×10万円」となることとなりました。

 また、障害者控除とは、障害者の相続人に一定の控除を認めるもので、
現在、「(85歳−年数)×6万円(特別障害者は12万円)」ですが、
これが「(85歳−年数)×10万円(特別障害者は20万円)」となる見込みです。

 平成27年1月1日以後の相続について適用

 


12.贈与税 相続時精算課税制度の適用要件の拡充

 多くの方がご存知の相続時精算課税制度ですが、適用要件が緩和されることとなりました。

・贈与を受ける人の範囲に、20歳以上の孫も追加となる見込みです。
(現在は推定相続人のみ、つまり現在はだいたい子供のみの場合が該当します)。

・贈与をする人の年齢要件を60歳以上(現在65歳以上)に引き下げる見込みです。

平成27年以後の贈与に適用されます。

 

 なお、念のため、簡単に相続時精算課税制度を説明しますと
2500万円まで、贈与税が非課税で贈与を行うことができるけれども、
相続時にその贈与財産も合算して相続税を納付することとなります。

 利点としては、いうなれば相続財産を先に移すことができて利用できるという点です。 
年配層の財産を消費意欲の高い若者に移転させるのが趣旨です。

 

 上記について現状で明らかでないのは実際に相続が起こった際に
相続時精算課税を利用して孫に贈与していた場合は、通常は孫は相続人で無いことから、
相続時の精算ができない場合はどのように取り扱われるという点です。
 今後の政省令で明らかになるものと思われます。

 


13.贈与税 教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税

 直系尊属(両親、祖父母)から30歳未満の直系卑属(子・孫・ひ孫)に対して、
受取人1人あたり1500万円(学校等以外に支払われる金銭は500万円)までを教育資金の為の信託等にすることを条件に、
贈与税を非課税とする制度が創設される予定です。

 

 なお、教育資金として使用するのが前提ですので、30歳に達した時点で信託等から使用していない残がある場合、その残金については、その時に贈与があったものとして、贈与税が発生します。

 

 こちらは、教育コストが相対的に上がっている現状では、家庭に嬉しい制度ですし、教育業界の活発化も期待できます。
 但し、教育資金として使用しなかった残金額について贈与税が課されてしまう点には注意が必要です。

何が教育資金に該当するかは今後の政省令で明らかになります。

上記は25年4月1日~平成27年12月31日までの贈与に適用されます。

 

 

【増税のもの】

1.所得税  最高税率の見直し

 平成27年分以後は課税所得4,000万円超の部分について45%(現行40%)の税率が適用されることとなります。

 但し、課税所得4,000万円超という方は滅多におりませんので、実際の影響はほとんどありません。

 


2.所得税等 社会保険診療報酬の特例の適用対象者の縮減

 お医者さんと歯医者さんに認められている経費の概算経費について、
収入金額が7千万円を超えている人は適用が受けられなくなることとなります。

 

 近年、自由診療で収入を上げているお医者さんも多くなっており、
社会保険診療報酬の収入が5千万円以下であっても、自由診療で収入が多いお医者さんについては、
概算経費を認める必要性が無い。との観点からの制限となります。

 こちらの概算経費については通常の経費より多く経費を取れることが多いです。

 

 個人は平成26年分以後の所得税、法人は平成25年4月1日以後開始事業年度から適用されます。

 


3.所得税等 上場株式等の配当・譲渡所得の10%軽減税率の廃止

 現在、個人が所有する上場株式等に関する配当や株式の譲渡利益に対しては
10%(所得税7%、住民税3%)の税率が原則として適用されています。
 但し、この10%は時限的な特例税率で、平成25年12月末をもって廃止されることとなりました。

 廃止後は、原則的な税率20%(所得税15%、住民税5%)に戻る予定です。

 


4.相続税  基礎控除の見直し

 以前から話に出ていましたが、保留となっていた相続税の大きな改正項目です。

 従来、相続税の基礎控除額は5,000万円+1000万円×法定相続人の数でした。
例として、奥様、子供2人の家庭では、8,000万円が基礎控除額でした。

 

 これが今後(平成27年1月1日以後)は
相続税の基礎控除額は3,000万円+600万円×法定相続人の数  
 上記の例(法定相続人3人)と同様とすると、4,800万円が基礎控除額となることとなります。


 基礎控除を上回る遺産が無ければ相続税がそもそも発生しませんので、
大部分の家庭が該当しませんでした。 

 

 現在の基礎控除額はバブル期の価格上昇に対応して引き上げられたという経緯があるため、
デフレ経済を考慮し、基礎控除額を引き下げることとなりました。

 ちなみに相続税の最高税率も55%(現在50%)に引き上げられる予定です。

平成24年度税制改正大綱及び社会保障・税一体改革素案のポイント


【概要】

 今回の改正のうち、社会保障・税一体改革素案という名前から多少わかるように、
社会保障の財源が不足するための対応策で、基本的には「増税路線」です。

 

「平成24年度税制改正大綱」

・所得税・住民税 給与に対する課税強化
・所得税・住民税 役員退職金に対する課税強化

 

「社会保障・税一体改革素案」

●消費税 税率引き上げ
●消費税 免税制度の改正

 となっております。


 以下、詳しく述べさせていただきます。


1.所得税・住民税 給与所得控除の上限設定

 年間給与収入が1,500万円を超える場合、「給与所得控除」は245万円を頭打ちにする。
という改正です。


 「給与所得控除」というのはいわゆる会社員が必要経費として認めてもらっている概算金額で
税金計算上控除できているものです。

 

 実際、会社員の自己負担経費はそんなにかかっていない(ほとんどが会社負担)というのが理由です。
給与収入の6%程度が必要経費との試算もあるとの見解です。


 年間給与収入が1千万円を超えると、超えた給与収入金額について給与所得控除は
その超えた金額の5%が認められるだけですので、
 実際の影響額は 1,500万円を超えた金額×5%×個人の税率 です。

 

 簡単な例として、年収2000万円の場合は、500万円×5%×43%(所得税・住民税)=107,500円
高給取りにあまり優しくない制度です。

 こちらの改正は、平成25年分以後の所得税(住民税は平成26年分以後)に適用されます

 

 

2.所得税・住民税 役員退職所得課税の見直し

 退職金の税金は非常に優遇されております。
短期間の役員就任で退職金を受け取る形を防ぐために役員退職金の課税が見直されました。
 天下りを防止するという面が強いものと思われます。

 

役員等の勤続年数が5年以下の場合、退職金課税が強化されます。

 

 退職金の計算は、(退職金収入−退職所得控除額)÷2に課税されるのですが、
 役員等の勤続年数が5年以下の場合で役員退職慰労金を受け取った場合は
上記算式の「÷2」が使用できなくなります。

 

 つまり勤続年数の少ない役員退職金の税金が従来に比較して倍になります。

 こちらの改正は、平成25年分以後の所得税(住民税も同様)に適用されます

 


3.所得税・住民税 
 特定の居住用財産の買い替え及び交換の場合の長期譲渡所得の課税の特例 の上限額減少

 譲渡価額の上限が1.5億円(現在2億円)に引き下げられます。

 この制度は所有していた期間が10年を超える一定の住宅を譲渡して
一定の住宅を買換えした場合又は一定の住宅に交換した場合に
譲渡益の税金のうち一定の金額を、買換え又は交換した住宅を売却するまで繰延べを認めましょう。
 というものです。

 

 従来より不利になりますが、通常の住宅であれば影響のない範囲と言えると思います。

 こちらの改正は、平成24年以後の譲渡に適用されます

 

4.消費税 税率引き上げ

・平成26年4月1日以後 8%
・平成27年10月1日以後 10%

 となる予定です。


5.消費税 免税制度の改正

 平成23年6月30日交付の税制改正でも消費税の免税制度の改正がありましたが、
さらに追加の異なる改正です。

 5億円超の取引高(厳密には課税売上高)の会社に間接所有も含めて50%超所有されている
会社に適用される改正です。

 

 設立当初2年間(H23.6.30改正後は場合により1年)は消費税の納税義務が無いのですが、
上記のある程度の規模のある会社の関係会社は、当初の免税期間も取れなくなる予定です。

 この改正は平成26年4月1日以後に設立される法人に適用されます。

 延び延びとなっていた平成23年度税制改正と震災復興財源確保税制が
平成23年12月2日に公布・施行されました。

・平成23年の税制改正は大綱と異なる結果となっていること
・震災関連で異なる税制改正も行われていること

から、6月30日に公布されているものとあわせて改めて全体的にそのポイントをお知らせいたします。 

 

【概要】

 平成23年に行なわれた税制改正はマクロ的な視点で見た場合、だいたいが増税の路線です。
 しかし、法人税率の軽減と繰越欠損金の期間延長を考慮すると利益が継続的に発生する中小法人にとっては悪く無い改正だともいえます。
 原則平成24年4月1日以後開始事業年度から適用されます。


 今回の改正で大きなものを
・減税のもの
・増税のもの
 にわけて記載すると

 

「減税のもの」
●法人税等 法人実効税率の引き下げ 
●法人税等 青色欠損金の繰越期間延長
●更正の請求が可能な期間の延長


「増税のもの」
●法人税等 大法人の青色欠損金の利用制限
●法人税等 復興特別法人税
●所得税  復興特別所得税
●住民税  復興特別住民税
●法人税等 定率法減価償却の償却率の減少(H23.6.30交付分)
●法人税・消費税・所得税・相続税・贈与税 故意の申告書不提出によるほ脱犯の創設(H23.6.30公布分)
●消費税 免税事業者要件の見直し(H23.6.30公布分)
●消費税 仕入税額控除制度の見直し(H23.6.30公布分)

です。

 

 以下、詳しく述べさせていただきます。


【減税のもの】

1.法人税等 法人実効税率の引き下げ

 平成24年4月1日以後に開始する事業年度から税率が適用されます。
(例:2月決算の会社は26年2月期からとなります。)

(1)中小法人(原則資本金1億円以下)
 ●所得800万円以下部分・・・法人税の税率が15%(現在18%)
 ●所得800万円超部分・・・法人税の税率が25.5%(現在30%)

 ちなみに所得が400万円以下の中小会社の実効税率としては、
 (15%×1.173+5%)÷(1+5%)≒21.5%
となります。


(2)大法人(資本金1億円超)
 法人税の税率が25.5%(現在30%)

 大法人の実効税率としては、
 (25.5%×1.207+7.56%)÷(1+7.56%)≒35.64%
となります(別途外形標準課税の付加価値割と資本割があります。)。


 ※上記記載しましたが、実際には後述する【増税のもの】2.の震災特別法人税が
別途課税されますので、結果として、上記の税額の1割増しとなる形です。

・震災特別法人税考慮した大法人の実効税率は
 (28.05%+※25.5%×0.207+7.56%)÷(1+7.56%)≒38.01%(別途外形標準課税の付加価値割と資本割があり)
 ※法人住民税には震災特別税は付加されない


2.法人税等 青色欠損金の繰越期間延長

 現在、青色欠損金の繰越期間が7年ですがこれが9年に延長されました。

(注)青色欠損金とは、青色申告の会社の所得(税務上の利益)がマイナスの場合に発生する損失です。
  その損失は繰越ができて、翌期以後の所得と相殺が可能です。

 平成20年4月1日以後に終了した事業年度において発生した欠損金から適用されます。


3.更正の請求が可能な期間の延長

 税額計算に誤りが見つかった場合等などで、その税金を取り戻してもらう手続きが更正の請求です。
(修正申告の反対の手続きとイメージしていただければと思います。)

 減税というわけではありませんが、手続きが可能な期間が延長されますので、
大きい意味で税金を減少できる可能性がある項目です。

 手続き可能な期間が従来は1年でしたが、それぞれ以下のようになりました。
・法人税 原則5年
・消費税   3年
・相続税   3年
・贈与税   6年
・所得税   3年

 平成23年12月2日以後に申告期限がくるものから適用されます。

 

【増税のもの】

1.法人税等 大法人の青色欠損金の利用制限

・資本金1億円以上の法人
・資本金5億円以上の100%子会社
 に適用されます。

 過去からの繰り越された青色欠損金(≒税務上の損失)がある場合、
従来はその青色欠損金の全てを使用することができましたが、今後は上記の大会社等は制限されます。
 繰越損失を使用する前の所得(税務上の利益)の80%を上限として繰越損失が使用できるようになります。


 例:所得が1期目△500万円、2期目△100万円、3期目400万円

 この場合、
【現在】3期目400万円−(△500万円+△100万円)<0 → 所得0円
【改正後】3期目 400万円×80%=320万円<500万円+100万円=600万円
         400万円−320万円=所得80万円

 大きな増税項目です。
 過去の損失が一切なく、今後も損失が計上されなければ影響はありませんが、
資本金はできれば1億円未満に抑えたいところです。

 24年4月1日以後開始事業年度から適用されます。


2.法人税等 復興特別法人税

 平成24年4月以後開始事業年度から適用の増税項目です。
震災復興のための財源を確保するために増税が決定されております。

 従来の法人税(厳密には課税標準法人税額)×10%

が増税されるイメージです。

 平成24年4月以後開始の期から、原則として国税の法人税の税率が25.5%となりますので、
単純には、25.5%×1.1=28.05%になる
ということとなります。

3.所得税 復興特別所得税

 平成25年~49年の25年間にわたる増税です。
震災復興のための財源を確保するために増税が決定されております。

 従来の所得税(厳密には基準所得税額)×2.1%

が増税されるイメージです。

 単純には所得税率30%だった人は30%×1.021=30.63%になる
ということとなります。


4.住民税 復興特別住民税

 平成26年度~平35年度の10年間にわたる増税です。
個人も個人住民税均等割が現在、年間4千円課税されておりますが、
今後は震災財源として1千円加算され、年間5千円の個人住民税となります。


5.法人税等 定率法減価償却の償却率の減少(H23.6.30公布分)

 現在、固定資産を取得した際、定率法の減価償却の率は定額法の2.5倍です。
これが、平成24年4月1日以後に取得する固定資産については、定額法の2.0倍となります。
 つまり、減価償却の金額が従来より減少します(但し、耐用年数全体で考えれば償却額の総額は同じです。)。

 但し、これには経過措置があります。
 事業年度の開始が平成24年4月1日より前の場合、その事業年度が終了する日までに
取得した固定資産については、現在の定率法の償却率(定額法の2.5倍)が認められます。
 例として、税制改正の影響が最も遅い、2月決算の会社では
平成25年2月期までに取得した固定資産について、現在の定率法の償却率を適用することができます。

 金額の大きな機械などの購入等を検討されている会社は上記も頭の隅にでも入れていただければと思います。


 なお、定額法と定率法の違いが分からない方についてはインターネット等で検索していただければと思います。

 簡単には定額法はその名の通り、減価償却費を耐用年数(使用可能期間)で均等定額に計上する方法です。
定率法は初期の段階で多く減価償却を行い、年数の経過により償却額が減少する方法です。

 耐用年数(使用可能期間)全体の期間で考えると総額の減価償却費は同額なのですが、
 定率法の方が前倒しで減価償却費を多く計上できるので、定額法に比較して節税した分を運用に回すことができる
ということで定率法の方が通常有利です。


6.法人税・消費税・所得税・相続税・贈与税 故意の申告書不提出によるほ脱犯の創設(H23.6.30公布分)

 増税という話しではないですが、罰則強化という面で、デメリット的な話しなのでここに記載させていただきました。
 確定申告書等をその提出期限までに提出しないことにより法人税や所得税を免れた者は、
5年以下の懲役若しくは500万円以下の罰金に処し、又はこれを重複適用されてます。

 こちらはすでに適用されてます。
従来より罰則が重くなっておりますので、適正に期限内申告のご協力をお願いします。


7.消費税免税点要件の見直し(H23.6.30公布分)

 消費税対象となる収入(以下、「課税売上高」と言います。)が
年換算で1,000万円を超えない場合、2年後の消費税の納税義務が必ず無かったのですがその制度が変わりました。
 小規模事業者にとっては劇的な改正と言えます。

 【平成25年1月以後に開始する事業年度】から適用するよう変更されてます。
(当初案は平成24年10月以後開始事業年度から変更予定でした。)

(1)法人
 ①前事業年度>7ヶ月の場合
  前事業年度の開始日から6ヶ月間の課税売上高又は給与支払総額>1,000万円・・・消費税の納税義務者

 ②前事業年度≦7ヶ月の場合
  前々事業年度開始日から6ヶ月間の課税売上高又は給与支払総額(注)>1,000万円・・・消費税の納税義務者
 (注)(前々事業年度≦5ヶ月の場合は、その前々事業年度の課税売上高又は給与支払総額)

(2)個人事業主
 前年1月~6月の課税売上高又は給与支払総額>1,000万円・・・消費税の納税義務者


 新設法人にとって最も影響が大きな改正といえます。
 新しく会社を作った場合、従来、資本金を1千万未満とすれば、最低2期目までは消費税の納税義務が無かったのですが、
今後(25年1月以後開始事業年度)は、2期目から消費税の納税義務者となる可能性がでてきます
(もちろん、1期目の上半期の売上又は給与が少なければ別です。)。


8.消費税 仕入税額控除制度の見直し(H23.6.30公布分)

 消費税対象となる収入が年間5億円を超える事業主にのみ適用される消費税の増税規定です。
平成24年4月以後に開始する事業年度から適用されます。

 消費税の計算方式は原則として「預った消費税」−「払った消費税」
を納付することとなります。
 したがって、消費税が非課税な収入(例:医者の保険医療や預金利息など)に対応する経費等の消費税は控除できないのが原則です。

 但し、今までは収入のうち消費税が非課税のものの割合が少ない(5%未満の場合)は、
簡便性から消費税が非課税の収入に対応する経費等も控除することができてました。
 それが、今後はできなくなってます。

 すなわち、収入のうち消費税の非課税のものの割合が少ない場合であっても、
原則通り、その消費税非課税の収入に対応する経費等を控除することができなくなります。

 なお、預金利息も対象となりますので、基本的に収入が5億円を超えるすべての会社が影響を受けることとなり、税額への影響は少なくても、事務手続きが煩雑となることが予想されます。

平成22年度税制改正のポイント

【概要】

 今回の改正で最も大きなものは、

●一人オーナー会社の役員給与に関する損金不算入制度の廃止
(特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の廃止)
●中小企業者等の少額減価償却資産特例の延長
(30万未満固定資産の全額経費特例の延長)
●中小企業投資促進税制の延長
●中小企業の情報基盤強化税制の拡充
●中小企業倒産防止共済制度の拡充「法人税・所得税」

●扶養控除の見直し「所得税」
●共同経営者の小規模企業共済制度の加入対象者の拡充「所得税」

●住宅取得資金等の贈与の贈与税の非課税枠の拡大「贈与税」
●小規模宅地等の評価減の縮小「相続税」
●定期金に関する権利の評価の改定「相続税・贈与税」


です。

 

 税制改正は、通常国会で採決されることとなりますが、従来では、この大綱がほぼ100%そのまま決定されております。
今回から与党が民主党となりますので、以前の自民党の大綱のようには完全にそのままとはならない可能性もありますが、
ほとんどの項目はそのままになるものとは思われます。


 なお、具体的な税制の細部の要件等につきましては、
●4月に公表される政省令や
●その後に発表される通達等

 を待つこととなりますので、ご留意下さい。

 


 以下、述べさせていただきます。


【Ⅰ.法人税の改正】

1.一人オーナー会社の役員給与に関する損金不算入制度の廃止
(特殊支配同族会社の役員給与の損金不算入制度の廃止)

 最も大きな目玉の改正です。 

 業務主宰者(社長)と関連者(一族)の持株割合等が90%以上で、
常務に従事する同族役員の割合が過半数を超える場合には、
業務主催者(社長)に係る役員給与の給与所得控除額相当額については、
法人の損金に算入されないこととなっている制度です(改正法人税法35条)。

※但し、所得が一定以下の場合は除外規定あり


 この制度が「平成22年4月1日以後に【終了】する事業年度」から廃止となります。
したがって、1,2、3月決算の会社はまだ適用されることとなります。


 但し、次回の税制改正で同じような効果がある別の制度を創設することを
目論んでいるようですので、この制度が無くなるとはいえまだ安心できません。

 

2.中小企業者等の少額減価償却資産特例の延長
(30万未満固定資産の全額経費特例の延長)

 30万円未満の固定資産を購入した場合、一括経費処理できる特例(年間300万円上限)
の適用期限が2年間延長しました(平成23年度末までが適用期限)。

 但し、この制度により一括損金処理した(資産に計上しないで経費とした)場合でも、
地方税の償却資産税の対象になりますので、ご留意下さい。
 償却資産税とは、事業用の固定資産に課される固定資産税(土地・家屋を除く)で、
課税標準額に対し、1.4%の税額を市役所(23区内は都税事務所)より賦課される税金です。
(但し、法人税法上損金計上可能)。

 

3.中小企業投資促進税制の延長(法人税・所得税)

 平成21年度末で適用が切れることとされていた減税措置について2年間延長され、
平成23年度末までが適用期限となりました。

 中小企業投資促進税制とは、
中小企業者等が一定の設備投資等を行った場合、

・税額控除(取得金額の7%)・・・減価償却とは別の税額控除
・特別償却(取得金額の30%)・・・減価償却の前倒し
 のどちらかを選択して行える制度です。

(注:通常は税額控除の方が有利です。)

 この制度は設備が大企業に比べて脆弱な中小企業の設備投資を後押しするものです。
具体的には、
・年間で70万円以上の一定のソフトウェア
・一式で160万円以上の機械装置
・一定の器具備品で年合計120万円以上の器具備品

 などが対象となる制度です。

 比較的金額のある設備投資を行う場合、この減額措置を受けられるケースがあります。
私も過去、結構、これらの税額控除や特別償却の明細を作成したことがあります。

 

4.中小企業の情報基盤強化税制の拡充

 積極的なIT促進を支援するための年間70万円以上の一定のセキュリティが確保された
IT関連設備を取得した場合には、
(平成23年度末までが適用期限)

・税額控除(取得金額の7%)・・・減価償却とは別の税額控除
・特別償却(取得金額の30%)・・・減価償却の前倒し
 のどちらかを選択して行える制度です。

(注:通常は税額控除の方が有利です。)


具体的には、

(1)基本システム
 ①サーバー用のOS(ISO認証しているもの等一定のセキュリティがあるものに限定)
 ②①がインストールされたサーバー
 ③仮想化ソフトウェア(ISO認証しているもの等一定のセキュリティがあるものに限定)

(2)データベース管理ソフトウェア(DBMS)
 ①データベース管理ソフトウェア(DBMS)(ISO認証しているもの等一定のセキュリティがあるものに限定)
 ②①+①の機能を利用するアプリケーションソフトウェア(財務会計等)

(3)連携ソフトウェア(ISO認証しているもの等一定のセキュリティがあるものに限定)

(4)(1)~(3)と同時設置のファイアウォール(ISO認証しているもの等一定のセキュリティがあるものに限定)

(5)(1)~(3)と同時設置の侵入検知システム(IDS)、侵入予防システム(IPS)、ウェブ・アプリケーションファイアウォール(WAF)
 (ISO認証しているもの等一定のセキュリティがあるものに限定)

 などが対象となる制度です

 

5.中小企業倒産防止共済制度の拡充「法人税・所得税」

 従来は、貸付限度額が3200万円だったのが、8,000万円に引き上げられます。

 中小企業倒産防止共済制度とは、あらかじめ掛金を払うことで、取引先が倒産した際に、積み立てた金額の10倍を限度に無利子・無担保で借り入れを受けられる制度です。

 この制度の優れているところは、
・実質的に積み立てとなる掛金を払った時に全額経費算入できる
・不測の事態に多額の借り入れをうけることが可能となる
・解約した場合は、40ヶ月以上払っていて一度も共済から借入を受けていない場合は、全額戻ってくる

 なお、共済から借入した場合は、借入額の10分の1が戻ってこないこととなりますが、
5年間で返済を行うことを考えると実質3%程度の利率で多額の資金の借入を受けられるわけです。
(もちろん借り入れをしないことも可能です。)

 要約すると
・有利な課税の繰り延べができる
・不測の事態に多額の借り入れができる

 ということとなります。


 節税的にも解約返戻金にも優れていますので、利益がでているようでしたら、取引先の倒産などにも備えて「中小企業倒産防止共済制度」の加入をお勧めします。

 なお、掛金月額の上限は20万円に引き上げられますので(従来8万円が上限)、
期末時に節税を考慮すると1年分の240万円まで前払いして経費を増やすことも可能です。
その後の掛金の減額も比較的容易に行えます。

 また、掛金総額の累計は800万円が限度となります(従来320万円が上限)。


【参考】
中小企業基盤整備機構(中小企業倒産防止共済制度)
http://www.smrj.go.jp/tkyosai/

 

 

【Ⅱ.所得税】

1.扶養控除の見直し「所得税」

 子供手当の創設に伴い、以下のように扶養控除が減額されます。

・16歳未満の扶養控除は廃止されます(従来所得税38万円)。
・16歳以上19歳未満の扶養控除は所得税38万円に減額されます(従来所得税63万円)。 

 平成23年分以後に適用されます。

 

2.共同経営者の小規模企業共済制度の加入対象者の拡充

 経営者の退職金としての小規模企業共済制度ですが、
従来は従業員数が20人(商業、サービス業は5人)以下の会社役員と個人事業主のみが対象だったのですが、
個人事業主について、

●配偶者
●後継者

 も対象となる形となります。


 小規模企業共済制度は非常に優れた制度で、掛け金は全額所得控除できるという大きな節税メリットがあり、また、事業を辞める時等の保険金は退職所得となり、これも税制的に優遇されております。

 ぜひ所得が比較的大きな事業主や会社役員は加入されることをお勧めします。
通常の個人年金に加入するくらいでしたら、その前にまずこの小規模企業共済に加入されることをお勧めします。


【参考】
中小企業基盤整備機構(小規模企業共済)
http://www.smrj.go.jp/skyosai/

 

3.中小企業倒産防止共済制度の拡充「法人税・所得税」

 前述(Ⅰ.5.)をご参考願います。

 

 

【Ⅲ.贈与税・相続税】

1.住宅取得資金等の贈与の贈与税の非課税枠の拡大「贈与税」

 平成21年~平成22年までの間に、【直系尊属】から住宅取得資金等の贈与を受けた場合、
500万円まで非課税とする特例がありましたが、平成22年以後は非課税金額が拡充されます。
(但し、贈与を受ける人の所得要件が加わります。【合計所得金額2,000万円以下】)。

・平成22年中の贈与  1,500万円
・平成23年中の贈与  1,000万円

 平成23年までが適用期限とされます。


この制度は親からの贈与だけでなく、祖父母等からの贈与も対象です。


 なお、他に、相続時精算課税制度では住宅資金の非課税枠の1,000万円の上乗せが従来ありましたが、この1,000万円の上乗せは廃止されます。

 

2.小規模宅地等の評価減の縮小「相続税」

 従来適用要件などを考慮し様々な節税の柱となった小規模宅地等の評価減ですが、
ある程度縮小されることとなります。

 具体的には以下の通りです。


・相続人等が相続税の申告期限までに居住、事業を継続しない場合の50%減額(200㎡限度)ができなくなります。
 例えば、従来は亡くなった方が住んでいた実家の敷地はそれだけで基本的に50%減額ができていました。

・一の宅地等について共同相続があった場合は取得者ごとに判定
 従来は共有持分の特例というのがあり、共有持ち分のうちに1人でも特定宅地等の要件を満たす者がいれば、
その共有持分全体(他の共有者の持分にも)、80%減額(240㎡限度)を適用することが可能でした。
 例えば、従来は実家の敷地を配偶者が共有持ち分を1%でも取得していれば、全てに80%減額を適用することなども可能でしたが、今後はできなくなります。

・一棟の建物の敷地に特定居住用とその他の部分などがあった場合は、部分ごとに軽減割合を計算
 従来はビル用地の特例といい、一部が特定居住用宅地に該当すれば、全てに特定居住用の減額(80%)が適用できるケースがありましたが、今後はそう簡単にはいかなくなります。

・特定居住用宅地は主として居住に使用されていた一の宅地等に限られる
 宅地のうち居住用が小さい割合の場合などは特定居住用宅地の軽減が利用できないこととなります。


 上記は、平成22年4月以後の相続・遺贈により取得する宅地等に適用されます。

 

3.定期金に関する権利の評価額の改定「相続税・贈与税」

 定期金に関する権利の評価方法が大幅に変わります。
実際の受取金額の現在価値に比較して、相続税・贈与税の評価額が大幅に乖離していることから評価の見直しとなりました。

 保険を使って相続対策を行っている方にはかなり影響があるものと思います。


(1)給付事由が発生している定期金に関する権利の評価
  次の金額のうち最も多い金額とされます。

 ・解約返戻金相当額
 ・一時金を選択できる場合には、一時金相当額
 ・予定利率等を基に算出した金額

 この改正は平成22年4月~23年3月までの間に締結した契約でかつ同期間に相続・遺贈・贈与による取得するものや
23年4月~相続・遺贈・贈与による取得するもの
 から適用されます。

 従来は、残存期間に応じて高い割引率(20%~70%)の評価で行うことができましたが、
金利情勢等も考慮して改正されました。
 税負担は大きくなります。


(2)給付事由が発生していない定期金に関する権利の評価
  解約返戻金相当額

 この改正は平成22年4月~~相続・遺贈・贈与による取得するものから適用されます。

 従来は、残存期間に応じてどちらかと言えば不利な率(90%~120%)の評価で行うこととなってましたが、
金利情勢等も考慮して改正されました。
 多少税負担は軽くなります。

 

 

4.最後に

 今回の改正は事業を行う事業主にとっては減税が拡張したと言えます。


 上記の他に重要な改正として、
自販機設置による居住用ビルオーナーの消費税還付等の防止制度もあります。
 ただ、これはこれからビルを取得したり建築したりする方程度しか影響が無いので、
上記では記載しておりません。

 自販機設置による居住用ビルオーナーの消費税還付とは、簡単に言うと、
 自動販売機を設置することで、通常居住用ビルオーナーでは受けることができない、
購入や建築等した建物代金に大幅に含まれている消費税の大部分の還付をタイミングをうまく行えば受けることが可能だったものです。

 これは消費税の盲点をついたものでしたが、多くの方がやり過ぎたので、防止されることとなりました。

 改正内容を見ると、居住用ビルオーナーだけでなく、通常の消費税の還付を考える場合にも影響がありそうなので、注意が必要になりそうです。
 今後の政省令や通達で詳しく調べたいと思います。

 


 その他、現在管轄の異なる社会保険料(日本年金機構)、国税(国税庁)、
について歳入庁が創設され、一括管轄となります。

 そうなると、厳密には違法の社会保険に加入していない会社が補足される可能性が高くなる
と思われます。


 昔と異なり、色々と正規の手続きと合法的な節税が求められる時代になっていると感じられます。
 

 

千代田区飯田橋 税理士 原俊之事務所

平成21年度税制改正のポイント

 今年も平成21年度税制改正が行われました。

 ただ、税制改正は皆様方にあまり関連の無いものも多く含まれておりますので、
多くの人に関係のあるもので細かいものを除外して、そのポイントをお知らせします。


 なお、具体的な税制の細部の要件等の細部につきましては、政省令や通達等の確認が必要となりますので、ご留意下さい。

 

【概要】

 今回の改正で最も大きなものは、

●中小法人の法人税率の減税
●不動産譲渡益の特別控除と買換え特例の拡充
●住宅ローン減税の拡充、リフォーム減税
●事業承継税制(相続税、贈与税)の創設

です。


 以下、詳しく述べさせていただきます。

 


【Ⅰ.会社の減税】


1.中小会社(資本金1億円以下の会社)の税率軽減

  所得(≠利益)が800万円以下の部分は法人税率が22%でしたが、今後2年間18%となります。
 利益がでている会社の税金が年間32万円最大で安くなります。


 ※平成21年4月以後に「終了」する決算期から適用可能です。

  多くの会社に関係してくる大きな改正です。

 

2.中小会社(資本金1億円以下の会社)の欠損金の繰り戻し還付復活

  欠損金の繰り戻し還付とは、その名のとおり、赤字を前の期に繰り戻す制度です。

  黒字がでたけれど、翌期は残念ながら赤字だった場合、
 その赤字を前期の黒字と相殺して、すでに払った法人税の還付を受けることができるのが
【欠損金の繰り戻し還付】です。

  会社の赤字は7年間繰越ができますが、その繰越との選択をすることができます。

  今までは設立5年までの会社等のみ【欠損金の繰り戻し還付】が利用可能でしたが、すでに事業が相当経過している会社も適用可能となります。


  ※平成21年2月以後に「終了」する決算期から適用可能です。

 

3.中小企業等基盤強化税制の延長

   一定の機械装置や器具備品を取得した場合に税額を安くできる減税措置の適用期限が2年間延長します。

 

【Ⅱ.土地・住宅税制】

1.買換え特例の拡充

   10年を超える不動産を売却して、不動産や機械等を購入した場合に、
  売却した不動産の売却利益の80%を圧縮できる買換え特例制度が3年間延長となりました。


2.不動産譲渡益からの1,000万円控除

   平成21年~22年の間に取得した土地等を5年経過後に譲渡した場合、その譲渡益から1,000万円を控除するという制度が創設されました。

   この制度は目玉です。

   数年前まで100万円控除という制度がありましたが、それを上回る1,000万円の控除です。

  不動産が底値と思う方は、購入して転売という話もあるのかもしれません。

 

3.先行取得資産の買換え特例

 平成21年~22年の間に土地等を取得して、届出書等を提出して、10年以内に他の土地等を譲渡した場合の譲渡益について、
 売却した不動産の売却利益の80%(平成22年取得分は60%)を圧縮できる先行取得資産の買換え特例制度が創設されました。

  この制度も目玉です。

 

  地主の方等は、平成21年~22年の間に土地等を取得する際には、とりあえず届出書は出しておいた方が良いかと思います。
  結局、買換え特例を受けないということもできますので。

  届出書を出しておけば、上記2.とどちらが有利かと考えて選択するという考えがあります。

4.住宅ローン減税の拡充

 近年では平成16年から住宅ローン減税の金額は縮小傾向でしたが、拡充しました。
居住年によって、受けられる控除額は以下となります。

●H21又は22年居住  対象借入限度5,000万円  控除率1.0%  控除期間10年

 なお、平成23年以後居住の場合は、上記より少なくなります。

 また、省エネ性能を有する新築住宅(以下3.参照)を取得する場合には、上記の控除率が1.2%となります(累計減税過去最大の600万円が最高)。


  近年の不動産市況の冷え込みに伴い、政府によるカンフル剤と言えます。
 不動産業者の方等は営業に使えるかと思います。

5.既存住宅リフォーム減税の創設

 既存住宅の一定の省エネ改修工事又は一定のバリアフリー改修工事を行った場合、
そのかかった工事費用(原則最大200万円)の10%を所得税から減税できるようになりました。
 特徴としては、リフォームローンを組まないで、【現金払いでも受けられる】というのが大きな目玉です。

  「対象となる省エネ改修工事」
   ●すべての居室の窓全部の回収・・・必須要件
   ●断熱工事(床、天井、壁)
   ●太陽光発電設備の設置・・・この場合、工事費用の最大が300万円までに拡充


   ※平成22年12月まで適用可能となってます。


6.新築住宅の減税

   一定の新築住宅の取得に係る「一定の標準的な性能強化費用」について、
  そのかかった費用(原則最大1,000万円)の10%を所得税から減税できるようになりました。
  (その年から控除しきれない場合には、1年間繰越可能)


 「一定の標準的な性能強化費用」については、現状では明確とは言えませんが、
 長期優良住宅と認定された住宅の省エネ性能や耐久性等で基準を満たすために必要となる標準的な費用のようです。

 つまり、長期優良住宅と認定された新地住宅を購入する場合には、それで減税を受けられる可能性があると言えます。


   ※平成23年12月まで適用可能となってます。

 

【Ⅲ.相続税】

1.事業承継税制(相続)

 オーナー社長が所有する、その非上場会社の株式を後継者である息子等が相続する場合、
発行済株式総数の2/3までの株式について80%相当の相続税の納税を猶予するというものです。

 しかも、
  ●その会社が破産した場合
  ●後継者が死亡した場合
  ●後継者がまたその後継者に株式を同様に承継させた場合等
 には、その最初の相続の際に猶予された分の相続税が免除となります。

  「つまり、相当の相続税が猶予ではなく免除にもなることが多いということです。」

   この制度を受けるためには、

  ●経済産業省の認定や継続届出(5年間は毎年、その後は3年ごと)
  ●株式保有割合の要件
  ●5年以上の事業継続要件
  ●8割以上の雇用維持要件
  ●その他の要件

   がありますので、注意は必要です。


 通常の非上場会社の株式に対する相続税は多くのオーナー経営者を悩ませてきたところですが、後継者がはっきりしている会社の相続税については、この制度を受けることでその悩みの大半が解消されることとなります。

 今まで、多くの会社が会計事務所のアドバイス等で、持ち株会社等を利用して、相続対策をやってきていますが、その多くが徒労に終わることとなる(笑)改正です。
  (今回の改正はホールディングカンパニーは原則として対象となりません。) 


 相続税の税制改正は抜本的に変わることもままあるので、あまり弾力性のない対策は打たない方が良いという典型的な例です。


 ※平成20年10月以後の相続から適用可能です。

 


2.事業承継税制(贈与)

  上記1.は相続の際のものですが、贈与にも似ている制度が新設されます。
 受けられる要件等は上記1.にかなり類似しております。

 また、この制度と相続税精算課税制度は重複適用可能ですので、生前に一括で株式を移すことも可能です。

 ※平成21年4月以後の贈与から適用可能です。

 


 具体的な、大綱については、以下のサイトをご参照下さい。
(PDFファイルとなっており、ダウンロード可能です。)
 自民党の大綱より、経済産業省の方が読みやすいので、事業関係の改正は、まず最初は、経済産業省のものを読まれることをお勧めします。

●経済産業省 平成21年度税制改正
http://www.meti.go.jp/press/20081212009/20081212008-3.pdf

●自由民主党 平成21年度税制改正大綱
http://www.jimin.jp/jimin/seisaku/2008/pdf/seisaku-032a.pdf

 

 

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